トップコミットメント会長メッセージ

創業者・石橋信夫の精神を忘れることなく継承していくことで、持続可能な成長を成し遂げてまいります。 取締役会長 樋口 武男

ステークホルダーの皆さま方に対する感謝の思い

この度、代表権を返上するとともにCEO(最高経営責任者)を退任いたしました。これまで数多くのお客さまをはじめ、株主および投資家の皆さま、協力会社の方々、従業員の皆さんなど、さまざまなステークホルダーに支えていただいて、大和ハウスグループとともに歩んでくることができました。長年にわたる皆さま方のご厚誼に心より御礼を申し上げます。今後は取締役会長として、引き続き後進の指導や社員教育に努めるとともに、大和ハウスグループの最も大切な経営基盤である創業者精神を継承する役目を全うしていく所存でございます。

2004年に会長職に就いて以来、早いもので15年が経ちました。創業者・石橋信夫の「創業100周年に売上高10兆円の企業グループ」という夢を受け継ぎ、社会の公器として世の中のために何ができるかを愚直に追求してきた結果として、売上高が4兆円を超える企業グループへと成長することができました。しかし、夢の道のりはいまだ半ばにも達しておらず、これからも社会課題の解決に寄与する企業として持続的発展を目指してまいります。

「社会の公器」としての使命を追求

企業経営に取り組むに際して「社会の公器」と強く意識するようになったのは、1993年に当社の関連会社であった大和団地の再建に向けて社長に就任した時です。当時、石橋相談役に呼ばれて再建を託された際「本来なら私がやらねばならないが、こんな身体なのでぜひ頼みたい」と言われました。大和団地の厳しい経営状況を知っていた私は、責務の重さに引き受けるのを躊躇したものの、その頃、健康問題を抱えていた石橋相談役から「経営の再建は社会の公器としての務め」と諭され、覚悟を決めました。

その後、2001年に大和ハウス工業と大和団地が合併するのにともない、大和ハウス工業の社長となりました。当時はグループの売上高は1兆円程度でしたが、社長そして会長と経営者としての職責を果たしていくなかで「社会の公器」としての使命を常に念頭に置いて、経営に邁進してまいりました。

売上高がおよそ4倍となった今日においても、その思いは寸分も変わるところがありません。

また、会長としての15年間を振り返ると、創業者精神の継承を念じ、社内における語り部として、石橋相談役の思いを社内外に伝えるとともに、本人が願っていた「世の中の多くの人の役に立ち、喜んでいただける商品・サービス」を展開することにひたすら取り組んできました。本レポートの冒頭に示している「何をしたら儲かるかという発想で事にあたるな。どういう商品が、どういう事業が世の中のためになるかを考えろ。会社は社会の公器やからな」という相談役の薫陶は、今も私の胸に焼き付いております。

創業者精神の実践を通じて持続的な成長を実現

晩年、石橋相談役が石川県・能登の山荘にて闘病生活となった際、当初は私を含めて多数の関係者が訪れていましたが、病が重くなるなかで、面会するのは私一人だけと指定されました。なぜ私だったのか、理由を聞くことは最後までありませんでした。私は中途入社で、当社における経歴のスタートは堺工場での資材管理担当です。けっしてエリートの道を歩んできたわけではなかった私がどうして呼ばれたのか、今なお不思議な気がいたします。

以来、毎月のように泊まりがけで訪問しては、会社の行く末について石橋相談役の思いを聞くとともに、私の考えを述べさせていただきました。そのときに直接教えていただいた創業者精神を社内に伝えてきたことが、今日の大和ハウスグループの発展につながっているのではないかと思います。

社長に就任した時に制定した「六つの判断基準」についても、石橋相談役の思いを継いだものです。会社と従業員、お客さま、株主、社会、将来のそれぞれにとって良いことかどうかを判断基準にして経営を行っていく。これは当時、頭に自然に浮かんだことですが、まさに創業者精神に由来したものです。

また、新たな事業を起こすキーワードとして考案した「ア・ス・フ・カ・ケ・ツ・ノ」は、安全・安心、スピード・ストック、福祉、環境、健康、通信、農業のそれぞれ頭文字を合わせたものです。いずれも社会が抱える課題を含んでいます。これもまた石橋相談役の「世の中の役に立ち、お客さまに喜んでもらえるか」という考えを具体的な言葉にしたものでした。

『わが社の行き方』にすべての答えが書かれている

この先、だれがどのように創業者精神を伝えていくかについて、心配される方がいらっしゃいます。しかし、私はそうは思いません。なぜならば、石橋相談役は『わが社の行き方』という素晴らしい本を遺しています。現社長の芳井敬一をはじめとして、すべての役職員が日々この本に学びながら業務に取り組んでおります。

たとえば、仕事で行き詰まったときにページを開くと、そこにはまるで石橋相談役が語りかけるかのように悩みの解決策を見いだすことができます。役職員一人ひとりがこの本を通じて、学び、折に触れて創業者精神に触れることで「社会の公器」としての使命に対する思いを新たにすることができます。また、事業のありかたについても、まるで未来を見通していたかのように的確に言及しております。「創業100周年に売上高10兆円」の道筋は、ひとえに『わが社の行き方』に書き記されているのです。

最近では海外の拠点で働く従業員も翻訳版の『わが社の行き方』に学んでいます。この先、創業者が思い描いた夢が、日本から世界に羽ばたき、世界のさまざまな課題を解決していく端緒になることを願っています。

徹底した現場主義が強さの原点

おかげさまで、当社の業績は好調に推移しております。事業における特徴、強みを挙げるならば、何といっても創業以来培ってきた現場主義です。かつて営業会議の席上、石橋相談役はある従業員のほこりまみれで底がすり減っている靴を指差しました。「何事にもこれくらい、足を使って現場を見なさい」「商売は足である」。こうした言葉のなかに事業に対する強い思いが込められています。

営業で担当する現場を歩き尽くして実情を知る。用地を購入する前に現場を歩いてみる。建設中の物件に問題がないか現場を確認する。すべての課題は現場にあり、答えもまた現場にあります。現場を自らの目で確認し、課題について考え、答えが見つかれば素早く行動を起こす。いわば当たり前のことばかりですが、現場・現物・現実の「三現主義」を大切にしていることこそが当社の強さの源といえます。

仕事において現場主義に徹する姿勢はこれからも変わることはなく、むしろ海外事業を含めて事業の内容、規模共にさらに拡大していくなかで、その重要性は増していくと考えます。

これからの成長の一番の鍵は人財育成

そしてこの先、当社グループとして成長を目指していくには、何よりも人財の育成が欠かせません。特に組織のトップに立つ者の存在は成長を大きく左右します。将来に向けてしっかりとしたビジョンを持ち、それを組織全体にわかりやすく伝えて浸透させていく。こうした人財を一人でも多く育成していく取り組みが欠かせません。

当社では、人財育成が重要であると認識し「管理職の仕事の半分は部下の育成に充てること」を指示しています。これから先、志を抱いて社会のさまざまな課題の解決に意欲的に挑戦できる人財を育てていくことで、当社グループは一回りも二回りも大きく成長できると確信しています。

もちろん、人を育てるのは容易なことではありません。肝心なのは知識や技術、技能の伝授だけでは育成にはならないということです。人とは難しいもので、要領の良さで立ち回っているだけではいずれ成長に限界が来ます。また、私欲や保身にかられた言動は一時的には通用したとしても、そのうちに他人から見透かされてしまうものです。人の成長として肝心なことは、他人から真に信頼される存在を追求する姿勢です。物事を目先の損得で考えるのではなく、自らの信念に基づいて「是々非々」を貫く。そして、与えられた場所でベストを尽くす。どんな環境にあっても自らの使命を誠心誠意果たす。こうした振る舞いは必ずだれかが見ているもので、さらなる飛躍の大きなきっかけとなります。

何かの分野で成功するためには人一倍の努力が欠かせません。それに加えて「運」というものも必要です。しかし「運」は漫然とやってくるのではなく、日々たゆまぬ努力を続けている人のもとに「運ばれてくる」ものです。こうした人財育成の最も大事なことは時代を超えた普遍的なものであり、これからにおいても大切なものであると信じています。

夢を抱いて挑戦できる風土の醸成

「創業100周年に売上高10兆円」という大きな夢に向かっていくのは、いうまでもなく若い従業員です。彼らが志を胸に挑戦したいと思える企業風土を醸成していくことが、経営トップの一番の使命であり、これからの成長に欠かせないと考えます。

「社会の公器」であるべき当社にはまだまだ課題が山積しています。しかし、創業者・石橋信夫の思いを次代にしっかり受け継ぎ、課題を一つひとつ解決し、さらなる成長を目指していきます。そして、近年の好調な業績にけっして慢心することなく、役職員が一体となってこれからの社会課題に向き合い、世の中にさらに貢献できる企業グループを追求してまいります。


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