トップコミットメント会長メッセージ

創業者精神の継承こそが、末永い成長の礎であり、社会の公器としての使命を果たすうえで不可欠と考えます。 代表取締役会長/CEO 樋口 武男

創業者の思いを継いだ「6つの判断基準」による経営

ある調査によると、100年以上経営が続いている企業は、全体の数%に過ぎないそうです。ほとんどの企業は100年を待たずして社会から姿を消しているわけです。それはなぜなのか。私が想像するに、事業が成功すると経営のトップは往々にして慢心しがちとなり、社会の一員たることを忘れ、ついには「私が、私が」と権力を笠に着るようになるからではないでしょうか。それは企業の大小に関係なく起こりうることであり、むしろ大企業こそ、経営トップが慢心した際、組織が大きい分、坂を転がり落ちるのも早いと考えます。

では、大和ハウスグループはどうであるのか。創業して63年が経ち、創業者である石橋信夫相談役から託された「社会に役立つ事業を続けて、創業100周年に売上高10兆円の企業グループになる」という夢を実現するため、全役職員が価値観を共有して邁進しています。

石橋相談役は常々、「従業員の後ろには家族がいる。また、協力会社や取引先があり、その家族がいる。会社はその多くの人の生活を守っていく責務がある。会社は社会の公器だ」と、おっしゃっていました。この信念のもと、だれよりも従業員をはじめとしたステークホルダーのことを思い、人の道を徹底して守ってきた石橋相談役の生き方は、数多くの人々を惹きつけてきました。そして、結果として今日の当社グループに対する社会的信頼へとつながっています。

私は2001年の社長就任時に、石橋相談役の思いを継いで「6つの判断基準」を制定しました。会社と従業員、お客さま、株主、社会、将来のそれぞれにとって良いことかどうかを判断基準にして、経営を行っていく覚悟を決めたのです。ステークホルダーとの良好な関係が企業には不可欠であること。また、目の前のことだけでなく、将来を考えること。これらを意識した経営を行う布石としました。この度、大和ハウス工業は国連グローバル・コンパクトの趣旨に賛同し署名をいたしましたが、6つの判断基準は本質的には同じ価値観をもったものであると考えています。

以後、一貫して守り抜いてきたのは、創業者精神の継承です。当社グループをゼロから創り上げた石橋相談役は、いわば会社の親であり、私は子に相当する従業員の一人として、当然の務めである親を敬う気持ちを大切にしてきました。そして、これから企業グループを担う役職員にも創業者精神をぜひとも継いでいってほしいと願っています。特に経営のトップに立つ者が石橋相談役の培った精神を遵守している限り、「私が、私が」と勘違いして、経営を危うくすることはないと確信しています。

企業の拡大に応じて、ふさわしい「社格」が求められる

現在、当社単体で従業員数は約1万7,000人を数え、グループ全体で約6万4,000人という巨大な組織となっています。2017年度の第79期はおかげさまで業績が好調に推移し、連結売上高が3兆7,000億円を超えました。今期はさらに4兆円を目指しゆるまずに邁進していきます。

しかしながら好調の時こそ、日々の言動は社会から常に見られており、「実るほど頭を垂れる稲穂かな」の言葉の通りけっして驕ることなく、謙虚な姿勢に努めなければなりません。企業は大きくなるほど、その姿にふさわしい「社格」が求められます。そして、役職員一人ひとりの発言や振る舞いが「社格」をつくっていることを忘れてはなりません。

2017年11月、当社の社長が交代となりました。新社長の芳井敬一は、私が思うに率先垂範を重んじる人物であります。また、創業者の後ろ姿から学んだ世代の一人であり、まさに「実るほど頭を垂れる稲穂かな」を実践する経営者だと考えます。当社グループは、彼のリーダーシップのもと、創業者精神を継承し、社会の公器としての務めを果たしていくことで、これからも持続的成長を成し遂げていくことになります。

社会の公器たる務めと、「当たり前のことを当たり前にやる」凡事徹底を積み重ねた結果として、世の中の皆さまが認める「社格」を築いていきます。

環境問題への対応をはじめ、これからの社会課題に応える

世の中に役立つ事業を引き続き創出することは、これからの事業展開を検討していくうえで根幹であると考えます。新たな事業を起こすキーワードとして、私は2001年に「ア・ス・フ・カ・ケ・ツ・ノ」を考案しました。これは安全・安心、スピード・ストック、福祉、環境、健康、通信、農業のそれぞれ頭文字を合わせたものです。いずれも社会が抱える課題を含んでおり、SDGs(国連 持続可能な開発目標)にも通じる考え方となっています。これらの観点を重視することで、新規事業の創出と社会的貢献に注力しています。

なかでも、世界規模で重要なのが、環境問題への取り組みです。当社グループでは、「脱炭素社会」に向けた取り組みを加速させ、自社活動と事業の両面から温室効果ガス(CO2)の排出量ネット・ゼロを目指した挑戦を継続して行っています。すでにエネルギー自給住宅や電力自給自足ビル、さらにはZET(ネット・ゼロ・エネルギー・タウン)の実証実験に取り組んでいるところです。

本年2月には、佐賀県にて日本初の再生可能エネルギーによる電力自給自足オフィスである「大和ハウス佐賀ビル」が竣工しました。私も竣工式に出席し、ビル内の蓄電設備などを見学してきました。これは自社活動における先進的な取り組みであるとともに、今後、事業としての大きな可能性を秘めた挑戦であると考えます。

このほか、大和ハウスグループは、自然エネルギーの活用比率を高める環境配慮型事業として、愛媛県佐田岬半島にて風力発電所を稼働しています。今後、再生可能エネルギーの供給事業もまた、地球温暖化防止に貢献するという観点から、重要な位置づけを占めることでしょう。

また、環境に限らず、高齢化や労働力不足などの社会課題解決のための新規事業創出も引き続き積極的に推進していきます。すでに作業支援ロボットを建設現場へ導入していますが、このような世の中の少し先を読んだ商品・サービスを提供していきたいと考えます。「売上高10兆円の企業グループ」に向けて、ベンチャー企業との協業、そして人財育成を通じて、挑戦意欲の高い従業員を一人でも多く育てることが欠かせません。そのなかから、自らのアイデアを活かして事業化に取り組む企業内ベンチャーを数多く生み出したいのです。現在、グループ企業の数は317社ですが、既存の事業に加えて、新たにグローバルで社会に役立つ商品やサービスを創出できればグループ規模はいくらでも拡大していけます。

これからの持続的成長を左右する人財の育成

新規事業の創出をはじめとして、今後の持続的成長に向けて当社グループが最も注力すべきことは、人財の育成にほかなりません。業務に関わる知識や技術、技能の習得はもちろん大切ですが、それとともに人間力の向上に向けた取り組みが欠かせないといえます。特に管理職以上の人には、これまで以上に対話を重視した部下の育成に重きを置くことを求めています。

私自身の若い頃の苦い経験で言えば、山口支店長に就任した際、血気盛んに仕事に打ち込んだ結果、部下に恐れられて四面楚歌に陥りました。支店長の就任から半年後に、視察に訪れた石橋相談役に悩みを打ち明けたところ、相談役は「長たる者、決断が大事やで」と一言だけおっしゃいました。私はこの言葉の意図を一生懸命に考え、部下とマンツーマンの「対話」を徹底することを決断しました。

お互いの心を開いた対話を重ね、分かり合うことで、時には厳しい指導であったとしても部下の心へ真っ直ぐに届くはずです。対話を通じて、役職員が互いの一つひとつの言葉の意図をしっかりと理解しあえる信頼関係を構築する。これこそが巨大組織となった現在においても、最も大切なことではないかと考 えます。

最後に、人は多様性があり、だれでもそれぞれに能力があると私は信じています。では、人のパフォーマンスの差は何かというと、やはり努力であろうかと思います。そして、努力を生む原動力はすなわち志です。戦後の日本において、創業者の石橋相談役が夢見たように、大きな志を抱くことから新たな事業が生まれるはずです。従業員の熱い志を受け止め、「世の中に貢献できること」をさらに生み出していく。これこそが、経営トップの使命ではないかと考えています。

当社グループの経営について、ステークホルダーの皆さまのご理解とご支援を賜りますよう、引き続きお願い申し上げます。


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