トップコミットメント社長メッセージ

代表取締役社長 CEO兼COO 芳井 敬一

「攻めと守りのバランス経営」

2019年度における一連の不祥事にて皆さまにご心配をおかけしてしまいましたこと、心よりお詫びを申し上げます。昨年4月に公表した戸建住宅および賃貸共同住宅における建築基準に関する不適合に続き、国家試験の受験資格を巡る問題、従業員による建設用資材の架空発注などのコンプライアンス違反事案を起こしました。

こうした不祥事が相次いだ事態を真摯に受けとめ、コンプライアンス体制を立て直すとともに、さらなる成長戦略の鍵として、昨年11月にガバナンス強化策を公表しました。

当社グループの連結売上高が4兆円を超えている現在、事業の急速な成長にガバナンスが追いついていないという現状を謙虚に反省しなければなりません。かつて当社グループの連結売上高が1兆円超であった頃、経営陣は「攻めと守りのバランス経営」を掲げました。これが今日の成長に至る基盤となっています。そして今また、この方針に立ち返ることで、さらなる成長を図ってまいります。

ガバナンス強化に向けた4つの基本方針

ガバナンス強化策の中では、「経営体制及び管理・監督のあり方の再検討」をはじめ、「業務執行の機動性及びリスク対応体制の強化」、「リスク情報の収集と共有の強化」、「持続性・実行性を支える環境の強化」という4つの基本方針を掲げております。

基本方針1の「経営体制及び管理・監督のあり方の再検討」社長メッセージでは、取締役会の実効性を高めるために、社外取締役の多様性を充実させるとともに、海外経験のある取締役を選任することとしました。これは、多様な価値観を有するボードメンバーによる多面的な視点での執行のモニタリングを目的としたものです。また、社外で培われた知見を取締役会の場で活かしていただくという狙いもあります。

基本方針2では、「業務執行の機動性及びリスク対応体制の強化」を定めています。2021年度からは事業本部制の本格運用を開始します。これにより、各事業の担当役員は事業全体の業績およびリスク管理に対して、責任を負うことが明確になります。

また、業務執行現場における適切なリスク・コンプライアンス対応の推進と業務環境整備を目的とする「コンプライアンス推進部」を昨年11月に立ち上げました。当部門では、事業を横断してリスク・コンプライアンスを見ていくとともに、各事業部門を支援していく役割を果たします。

基本方針3の「リスク情報の収集と共有の強化」については、外部法律事務所に内部通報の窓口を新設することで、リスク情報の入手経路を拡充させました。これによって、有事の際に従業員が躊躇なく通報できる仕組みとなっています。

そして基本方針4では、「持続性・実行性を支える環境の強化」を定めました。これは、BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)などの活用によるDX(デジタルトランスフォーメーション)を通じて、業務システムを強化していくものです。

今後、当社グループではガバナンス強化に向けて、これら4つの基本方針を全社に浸透させてまいります。

「三方良し」で当社の強みを発揮

2019年度を振り返ると、当期の国内経済は、10月に消費税率が引き上げられたのに加えて、自然災害が相次ぎ景気への悪影響が生じました。また、米中貿易摩擦をはじめとする世界経済の不確実性がマイナス要因となりました。そして、第4四半期において、新型コロナウイルスの感染症拡大によって経営に影が差すこととなりました。今年の年頭訓示で、私は「改革」「変革」「革新」という三つの「革」の時代と社内に申しました。そして、奇しくもコロナショックという事態に直面している現在、「革」に向けた取り組みの重要性をあらためて認識しています。

厳しい経営環境のもと、当社においてはセグメントによって業績の濃淡があったものの、商業施設および事業施設を中心にほぼ想定通りに推移した結果、売上高および利益ともに過去最高を更新することができました。

好調の背景としては、流通店舗事業の立ち上げ以来、土地オーナーさまとテナントさま、そして当社の3者が、いわば「三方良し」の良好な関係を築いてきた点を挙げることができます。2020年度も理想的な正三角形の関係において事業展開で当社の強みを発揮できたと考えています。

成長に向けた後継者育成

これからの成長に向けて最も重要なのは人財育成です。ガバナンス強化策の基本方針1「経営体制及び管理・監督のあり方の再検討」では、社外取締役の多様性を高めるとともに、社内取締役の定年制も導入することとしました。原則として代表取締役は69歳、取締役は67歳までとしています。経営人財の成長は、前任者のゴールが見えてこそ促されるという考えのもと、導入を決めたものです。

こうした制度の導入に併せて、人財育成の仕組みも変えていきます。従来から、当社は社内外での研修や「やらせてみる、与えてみる」ことによる人財育成に取り組んできました。今後は400社近いグループ会社の経営を任せて、互いに切磋琢磨する中から当社グループの経営を託するにふさわしい人財を育てていきたいと考えます。

描いた未来の夢、その夢をカタチにすることが私たちの使命

戸建住宅、賃貸住宅、商業・事業施設のコア3事業の中では、グループ売上高の約4割を占める商業施設および事業施設の事業が好調に推移しています。当社グループの事業横断的な横軸での連携を最大限に活かして、都市の再開発事業を各地で展開しています。現在進めている新たなまちづくりの展開としては、環境を組み合わせた取り組みです。これまでも当社の強みは多様な事業ポートフォリオを活かした一気通貫でのまちづくりですが、そこに環境エネルギー事業による付加価値を強みとして「R3」、すなわちリアリティ(現実)、リニューアブル(再生可能)、レジリエンス(回復力・復元力)をキーワードとしたまちづくり「コ”Re”カラ・シティ」を企画し、追求していきます。

その代表例が、昨年7月に千葉県船橋市にて立ち上げた大型複合開発「船橋グランオアシス」です。これは物件の施工時から竣工後の暮らしに至るまで、再生可能エネルギー由来の電気のみを利用するという日本初のまちづくりです。建物を建てることに加え、まちに再生可能エネルギー由来の電気を供給するといった環境エネルギー事業も含めて、当社のグループ総合力を結集して取り組んでいます。

また、今後は住宅と商業施設および事業施設に加えて物流施設もセットにした開発も手がけ、新たな可能性を拡げていきます。

ここでの挑戦は、描いた未来の夢をカタチにする、実現させることにあります。当社グループでは、このプロジェクトを必ず成功させるとともに、現実となった「夢」をさらにブラッシュアップして、今年度以降、同様のプロジェクトを全国の支社で展開していくことにより、当社グループにおける新たな可能性を拓いていきたいと考えています。

一方、海外事業についても、おおむね順調に推移しています。中でも、東南アジアにおいて環境ニーズを軸にした事業が好調です。加えて、生鮮食品や冷凍食品を産地から消費地まで所定の温度を保ったまま流通させるコールドチェーンの構築という現地の社会課題に対応した物流施設を手がけています。今後も中長期的な視点のもと、地域ごとの社会課題に取り組んでいく考えです。

何事にも動じることなく、社会課題に真摯に向き合う

2020年度の経営環境は、申すまでもなくたいへん厳しいものになると考えます。しかしながら、新型コロナウイルス感染症拡大という外的要因に転嫁した業績の低迷は許されるものではありません。これまで積み上げてきたことを踏まえて、今年度もなすべきことを着実にやり遂げ、業績を確保していく覚悟です。

当社グループは、ポートフォリオが多様であるため、景気変動の中で強みを発揮いたします。しかし、コロナショックという前代未聞の逆境におかれて認識した弱点もあります。この反省に立ち、ポートフォリオをより強固なものとすることが、社会課題に応える使命を果たしていくうえで不可欠といえます。

新型コロナウイルス感染症拡大は、当社グループに大きな試練をもたらすと危惧する一方、これからの時代に向けて変わっていくための機会を与えられたと前向きにとらえています。たとえば、新型コロナウイルスの感染症拡大が世界規模で深刻なものとなる中で、影響が最小限にとどまると思われる環境エネルギー事業の分野を大きく伸ばすべきだと確信するようになりました。また、厳しい経営環境だからこそ、住宅ストック事業である「リブネス」の重要性を再認識しています。

リブネスはブランドとしての事業拡大を図る一方で、日本の人口減少と少子高齢化に向けた社会課題解決型の事業としても重要な役割を果たすと考えています。

その具体例が、「リブネスタウンプロジェクト」という当社がこれまでに手がけた住宅団地の「再耕」を目指した取り組みです。現在、兵庫県三木市や神奈川県横浜市などの当社がかつて開発した住宅団地において、多岐にわたる実験的な取り組みを行っています。今後は、在宅勤務が拡がり、働き方が変化することによって、住まい方が変化していくことが想定されます。特に子育て世代においては、仕事の都合上便利な都心部や駅前に集中していた住まいを、ワークスペースが確保された戸建住宅や郊外型ニュータウンへ移住することも考えられます。そのような新しい暮らし方にも対応でき、郊外の住宅の魅力が改めて見直される時代に向けて、ふさわしいまちづくりへの取り組み、提案を引き続き進めてまいります。

これまで当社グループは、「先の先を読んで手を打て」の考え方のもと、いかなる厳しい時代においても活路を拓き、新たな成長のきっかけを生み出してきました。今回においてもそれは変わりません。経営トップとして何事にもけっして動じることなく、社会課題の解決に注力してまいります。

気候変動というリスクに真摯に向き合い、環境貢献型事業を育てる

多くの機関投資家の方々が、長期的かつ持続的な企業価値の向上に向けた取り組みの一環として、気候変動の問題について重大な懸念を表明されています。当社は7つのマテリアリティを特定していますが、そのひとつが「環境負荷の低減と企業収益の両立」です。

その根本的な考え方は、自社活動で得た省エネや再エネのノウハウを事業機会に活かすということです。自社活動では、国際イニシアティブのEP100・RE100・SBTに加盟し、既存施設での省エネ改善と新築施設でのゼロ・エネ施設化を図るとともに、「自分たちの使うエネルギーは自分たちで創る」と決意し、2040年までにすべての電力使用量を自ら創った再生可能エネルギーで賄うことを目標としております。ハードルの高い課題ではありますが、将来のあるべき姿から逆算して設定した目標に向かって進んでおり、私としては計画を前倒しする強い意志で実現を目指しております。一方、商品においても今年4月からすべての戸建住宅をZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)仕様とするなど、取り組みを加速させています。今後はZEHやZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)の推進、環境エネルギー事業の拡大、「コ”Re”カラ・シティ」の開発、「リブネスタウンプロジェクト」などと連携を図るなどして、環境貢献型事業の拡大に注力していきます。

当社グループは、マテリアリティの筆頭に「社会課題を起点とした事業機会の拡大」を掲げています。これは65年の歴史においてひたすら追求してきた事業の根本です。世界経済が大きく揺らぐ中で、今また創業者精神を発揮して、社会の課題に真正面から立ち向かう必要があります。この取り組みをもとにして、中長期の成長を成し遂げていく覚悟です。

当社グループは新型コロナウイルス感染症拡大による世の中の変化にも動じることなく、時代の先の先を見据えつつ、社会課題の解決を通じて企業価値の向上に愚直に取り組んでまいります。つきましては、引き続き変わらぬご支援を賜りますよう心よりお願い申し上げます。

※詳細は統合報告書2020 P4参照


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