対談 【第3回】長寿社会における生きがいのあるまちづくり

自治体や住民とともに街のデザインを

司会 豊四季台団地の問題を解決しないと、柏市の未来はないということですね。

木村 そうです。さきほど廣瀬さんも触れましたが、市役所ほど縦割りの組織はないとよく言われます。高齢者の就労問題を一つやるにしても、農業関係というと農政課に行く。保育所なら保育課や児童課。みんなつながって協力していかないと、そっちはそっちでやってよ、では済まない時代が来ているのです。

司会 黒澤明監督の「生きる」という映画も、縦割りの弊害が社会課題の解決を遅らせているというストーリーでしたね。秋山先生、この豊四季台で急速な高齢化が進み、それを解決するためには、国、自治体、そして企業に期待したい部分もあります。その意味で「アグリキューブ」はどんな役割を担っているのでしょうか。

秋山 私たちの目標は、歩いていける、自転車でいけるぐらいの距離に、仕事場をたくさんつくることです。どういう仕事場をつくるかは、そのまちにどのような資源があるかによります。柏は利根川の流域で、肥沃な土地に恵まれた農村でした。現在も住宅地に畑が点在しています。しかし、農家が高齢化して休耕地になっています。休耕地を開墾すれば、そこでリタイアした方々が働けます。リタイアしたサラリーマンがセカンドライフの新たな仕事として農業に勤しんでいます。
私は、元気な人だけ働けばよいとは思っていません。少し身体が弱っても、農業をやりたければできるような環境をつくりたいと思った時に、「アグリキューブ」のような植物工場がふさわしいと思いました。屋内で棚式の高齢者にやさしい農法です。
もう一つは、建て替える新しい団地の屋上を農園にして欲しいのです。そこで「ポット栽培」をすれば、体力が衰えて、たとえ車椅子の生活になっても農業ができます。
大和ハウスからアグリキューブを2台寄付していただきました。IOGには産学連携のネットワークがあり、現在60数社が参加しています。企業にはいろいろな形で私たちのまちづくりに貢献していただいています。
これからの長寿社会のまちづくりにおける企業の役割は、自治体が構想と実施計画を立てて企業に発注するという「20世紀型」ではなく、「官」と「民」が最初の構想段階から協働して取り組む「21世紀型」の連携関係に移行する必要があります。
単に発注を受けた商業施設や介護施設をつくるのではなく、初めからどういうまちをつくるかを自治体や住民と一緒に考えていく、デザインしていくことだと思います。それを大和ハウスにも希望します。

司会 廣瀬さん、今の秋山先生のご期待に、どう応えていきたいでしょうか。

廣瀬 大和ハウスも家づくり・まちづくりに携っている企業ですから、真摯に受け止めなければいけないですね。同時に、豊四季台のように先進的なまちづくりが進められている事例のノウハウを他の地域でもうまく活用していきたい。
大和ハウスもこれまで「ネオポリス」という戸建て住宅団地をいくつもつくってきました。そこでも同じ高齢化問題が出てきていますから。

司会 豊四季台の先進性とは、特にどういう点でしょうか。

廣瀬 産学官民が連携しながらまちづくりを進めているのはまさに先進モデルですね。日本が将来抱える課題のほとんどが、このまちに現れています。そこで取り組まれる課題解決手法は、他の高齢化地域でも展開されるべきものだと思います。

司会 日本の大都市の郊外には、至るところに団地があります。豊四季台と同じような高齢化の中でどう取り組んでいくかというビジョンを、URはお持ちなのでしょうか。

佐藤 URは、これまでも高齢者対応を取り組んできましたが、建物のバリアフリー化やエレベーター設置など、ハード面での対応が主でした。
しかし、高齢者が安心して住み続けられる住まい環境を考えると、ハードだけではなく、ソフト面も重要です。URでは、この豊四季台団地での取り組みを参考にしながら、高齢者でもいつまでも安心して暮らせるように、ソフト・サービスの取り組みを充実させながら他団地で展開していくことを目指しています。
例えば、高齢者が外出したくなるようなきっかけづくりも必要です。その一つが、このプロジェクトで進めている「生きがい就労」です。仕事に行くから外に出る。また、団地の中にコミュニティを形成できる場があって、そこで団地のお友達とお話ができるから一歩外に出る。こうした仕組みづくりが、高齢者にとって日々の生活の中で「生きがい」になります。これからのUR団地では、このような要素も必要になると思っています。

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