対談 【第3回】長寿社会における生きがいのあるまちづくり

「アグリキューブ」から生まれるコミュニティ

司会 ここではどんな野菜をつくっているのでしょうか。

木村 今は小カブや、レタス系の野菜2種類、ミズナ。この4種類をテスト的に栽培しています。4つの野菜で、温度や照明の照射時間を変えて基礎データを蓄積しています。

司会 つくった野菜はどうされていますか。

佐藤 この5名の方々が、品質を確認するために試食されたり、関係者内で消費しています。

秋山 学校の給食に生野菜の使用は衛生上の問題などで難しいそうですが、水耕栽培だと衛生上の多くの問題をクリアできます。将来は学校の給食に使っていただければよいと思っています。私達の目指すセカンドライフの就労事業は採算をとって事業を回していくことが目標なので、それができないと完成したことにはなりません。

司会 私たちの雑誌「オルタナ」では高齢者や障害者の方を積極的に雇用し、しかもビジネスとして利益も上げていく「ソーシャル・ファーム」をよく記事にしますが、アグリキューブも、ソーシャル・ファーム的な存在ですね。

秋山 今は普通の小カブをつくっていますが、「あやめカブ」という紫の線が入っている洒落たカブは、イタリアンやフレンチレストランで高いニーズがあります。アクリキューブは、そういう稀少野菜を栽培するには最適な環境なのです。就労シニアの方々に研究していただいて、事業として回っていくような付加価値の高い品種を出荷できるようになればよいと思います。

司会 付加価値を高めることは、おそらくこの種の事業としては最も大事なポイントですね。

佐藤 室内で自由に温度や照射時間を変えられるので、その季節には採れない野菜もつくれます。海外の野菜などにもチャレンジして、付加価値のある野菜をつくっていきたいです。

司会 農薬は使ってないのでしょうか。

木村 使ってないです。そのまま採って食べていい。

井上 一般的に植物工場でよく言われているメリットが「安全・安心」です。無農薬で栽培できることももちろんですが、環境を管理できるため、農業の一番の課題である気候変動に左右されないことが最大の特徴ですね。収益の不安定さを解消できますので、経営的にも安定させることができると考えています。
「アグリキューブ」は商品として販売させていただいてから、まだ日が浅いため、今後も更に進化させていかなければなりません。進化させるための手段の一つとして、ユーザーの方の意見をどんどん取り入れ、使いやすさ、使い勝手を改善した商品づくりも非常に重要になります。現在の商品は、ユーザー目線で開発したつもりですが、どうしても作り手志向・作り手本位の思考から抜けてない点もたくさんあります。そのため、今もこちらの就労スタッフの方が、自分たちで工夫・勉強されて、そしてもっとこんなことができないかというご要望をたくさんいただいています。こちらのユーザー様のご意見・ご要望も今後の商品開発に活かしていきたいと考えています。

司会 こういう新しいものが生まれる時に障害になるのは、技術力ではなく、縦割りの弊害だったりします。仕組みを変えるために皆で力を合わせて、少しずつルールを変えたり運用を変えたり。このあたりがすごく大事になってくるような気がします。

秋山 そのとおりです。また、植物工場に関しては、もちろん就労の場を提供することが本来の目的ですが、地域住民の方々が見に来て、どれだけ大きくなったかな、この次は何をつくるのだろうとか、家から外に出て言葉を交わす、人と人をつなぐ役割も期待しています。
アグリキューブの近くでバーベキューをして、栽培棚から取れたてのサンチュで焼肉を巻いて食べる、皆でわいわい賑やかにビール飲む、そういう光景は素敵ですね。
長寿社会では安心や安全は無論大切ですが、それと共に、快適で楽しい、そういうまちをデザインすることが大事だと思っています。

木村 この栽培ユニットも、ただ野菜をつくるということではなくて、コミュニティの中で一つのコミュニケーションツールとして役割があります。ここに新しい商店街ができる、特養もある。そういったつながりの中で、そこでつくった野菜を自分たちで食べる。そうした「つながり」こそが地域社会だと思うのです。

秋山 私たちは、何歳になっても「ワクワク、ドキドキ」を求めています。70歳になっても80歳になっても、ただ安心・安全なだけじゃなく。日々の生活の中に喜びがある、ワクワクするものがある仕掛けをつくっていく。大和ハウスには、そういうまちのデザインの構想段階から参加して欲しいと思いますね。

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