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Vol.9 ピグミーの森の家(コンゴ・イトゥリの森)

Vol.9 ピグミーの森の家(コンゴ・イトゥリの森)

コンゴの気候、エフェ・ピグミーの生活

コンゴ民主共和国はアフリカ大陸の中央部に位置する国です。広大な熱帯雨林が広がる国土の北東部にはさまざまな動植物が生息している「イトゥリの森」があります。イトゥリの森は熱帯性気候に属し、年間を通して気温は高く、降水量も多い気候で、乾季(12月~2月)と雨季(3月~11月)に分かれています。

このイトゥリの森には、「エフェ・ピグミー」と呼ばれる人びとが暮らしています。彼らの生活の柱は、狩猟・採集※です。狩猟には弓矢や槍を用います。男性だけで行う集団槍猟では時にゾウやバッファロー、オカピなどの大型動物をねらいます。一方、女性は森の中でイモ類や果実を採集するほかに、薪(まき)あつめ、水くみ、食事の用意をします。

森に乾季が訪れる1月から2月ごろになると、エフェはベースキャンプから森のキャンプ地に移動します。森にはいくつものキャンプ地があり、近いものでベースキャンプから10kmぐらい、もっとも遠くではベースキャンプから数十kmも離れた場所にあります。キャンプ地周辺でとれる獲物や食物が少なくなると、約2週間から2カ月ごとに別のキャンプ地に移動します。一般に、狩猟採集民は短期間で居住地をかえます。そのため食物や生活に必要な木や葉などの資源が採り尽くされることなく、再生産されるのです。移動するときに持っていくのは、狩りに使う道具や家財道具など、わずかな所持品だけ。住まいをひんぱんに移動する民族は、家財道具が少なく、家も簡単なつくりであることが多いのです。

※食料や生活に必要な植物をとること

森にある素材でつくる小さな家

家はドーム型のテントのような形をしており、床の直径が2~3m、高さが1.2m~1.5mの大きさです。男性の平均身長が150cm以下で、女性はそれよりも10cm低い小柄なエフェでも、家の中で背を伸ばせないほど小さいつくりです。家の素材は直径2cm、長さ2~3mくらいの20~30本の木、ツル植物、何百枚ものマングングの葉(クズウコン科の長さ40~60cm、幅20~30cmの大きな葉)。これらは森の中に豊富にある植物で、簡単に手に入れることができます。次のキャンプ地に移動するときは、家を残していきます。移動先のキャンプ地では、以前に建てた家を補修して使うか、新しい家を建てます。エフェの家は再利用でき、ゆくゆくは土にかえる材料で作られているため、基本的に使い捨てられています。

キャンプ地の配置(一例)
兄弟姉妹や親友がいれば互いに近くに家を建てる

家づくりの様子

エフェは夫婦で協力して家をつくります。夫は森に行き、木とツル植物を切り出してきます。妻は森でマングングの葉を集めます。家の素材がそろうと、家の円周に沿って、木を1本ずつ地面に20~30cm間隔で突き刺していきます。それぞれの木の先を内側に引っぱり、互いに編むようにからみあわせて、ドーム型の木組をつくります。この作業は夫婦二人で行い、木組は1時間以内にできあがります。

この木組にツル植物を巻き付けて、木々を結びつけます。その後、マングングの葉に切れ目を入れ、木の枠に葉を引っかけるようにして、木組の下から上へと葉を重ねて固定していきます。マングングの葉をつける作業は、妻の仕事。最後にマングングの葉を組み合わせてつくった円形の笠(かさ)のようなものをドームの頂点にのせて蔓で固定すれば、家のでき上がりです。マングングの葉をつける作業は時間をとられるため、家の完成までに数日かかります。

葉柄部分までの太いところに切れ目を入れる。
雨もりを防ぐために3~4枚重ねたものを横にはったツルにひっかける。

家は家族の連帯を強める空間

エフェの家は主に食事のときと、寝るときだけに使われます。1日の食事の回数は決まっていませんが、夕食だけはかならずとります。調理は主に家の外で行い、できあがった食事は家の中でとります。エフェの文化では食事を人前でしながら他人に分け与えないのは、その人に対してあからさまな反感を示していると考えます。そのため、他人からは見えない家の中で、夫婦とその子ども、時には夫婦の兄弟など近い家族だけで食事を分配します。つまり、エフェにとって家の中は、家族の連帯を強化し維持する空間でもあるのです。

また、エフェは夜、家の中央に薪を持ちこんで火をおこし、たき火のそばで家族が身をよせ合って眠ります。森のキャンプ地は、日差しの厳しい昼間は30℃以上になりますが、日が沈んで明け方近くになると15℃以下に冷え込むこともあります。こうした寒さをしのぐため、あえて家を小さくつくります。天井を高くして家の内部を広くすると、家の中が暖かくならず、明け方の寒さが身にこたえます。入口も小さく作り、眠るときはアフリカショウガやラフィアヤシの大きな葉でふさぐこともありますが十分な寒さよけとはいえません。夜の寒さをどう防ぐかが暮らしの課題といえます。

ただ、エフェは、彼らの先祖が死んだ後も森の奥に住み続けていると信じているため、生活様式を変えてしまうと、遠い先祖から自分たちまで続く生命のつながりを捨て去ることになると考えます。そのため、生活の近代化や欧米化が進むアフリカにあっても、森の中で何世代もの間、昔ながらの家をつくり伝統的な生活を続けています。

家の外で調理をする様子

家の中はせまくて天井も低いので、
座るか横になるかしかできない

POINT

  • 森の植物を使って建てた家だから、使い捨てても土にかえるんだね。
  • 家の下側から葉っぱを重ねてつくるから、雨がふっても雨もりしないよ。
  • とても小さい家なのは、寒さをしのぐためなのね。

参考文献:澤田昌人「森の死者と家の精(ピグミー|アフリカ熱帯雨林の狩猟採集民|キンサシャ・コンゴ)」
佐藤浩司編『住まいをつむぐ』学芸出版社、1998年、29-48頁

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