Special Interview スペシャルインタビュー サステナブルな人 料理研究家 門倉 多仁亜さん

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サステナブルな人 スペシャルインタビュー 門倉多仁亜さんに聞く ドイツ式「シンプルに、心地よく」を続ける暮らし

門倉 多仁亜 さん

2016.09.28(2013年12月記事再掲 ※)

私たちが家庭の中でできるサステナブルなこととはどんなことなのでしょうか?本当に必要なものに囲まれた暮らしの中で、「シンプルに、心地よく」を実践していらっしゃる料理研究家の門倉多仁亜(かどくら たにあ)さんに、そのヒントをお話しいただきました。

ドイツ風のシンプルな暮らしに、どんなイメージがありますか? 私は小さい頃からドイツ人の母や祖父母から整理整頓を徹底して教わってきました。ドイツ人は家庭生活を重視し、「家」の居心地を大切にするというスタイルが確立しているので、そのために必要なものをきちんと見極めて、シンプルに暮らしていけるのです。

深刻な環境問題がドイツ人の意識を変えた

環境先進国として今のドイツがあるのは環境問題に直面する機会が多かったからなんです。1980年代に経済発展の影響で酸性雨が発生しドイツ南部に広がる広大な針葉樹林「黒い森」が消滅の危機に瀕しました。自らを「森の民」だと自負するドイツ人は、それを転機にこれまでの暮らしを見直し、法律も変えることになりました。

簡単に言えばすべての生産者は法律上、製品がゴミになったときのことまで考えなければならなくなったのです。例えば車のリサイクル率は、2015年には95%にまでしなければなりません。更に、寒さの厳しい冬にエネルギー消費抑制ができるよう、住宅の断熱性能にも厳しい基準があります。子どもたちへの環境教育の着手も早く、国が積極的に動いています。

自分のスタイルを持つことがサステナブル

ドイツの環境意識が高いのは自分のスタイル(=軸)を持っていることも大きいと思います。日本人は流行に敏感でオシャレですが、流行に振り回されてどんどんものが増えてしまう。いずれはタンスの肥やしとなり、掃除や整理整頓が行き届かなくなって……という嫌なスパイラルに陥って疲れている人が多いのでは?

これでは、心地よい生活は持続できません。自分のスタイルをきちんと持ち、本当に必要なものを見極め、シンプルに暮らすことこそが自分にとっても、環境にとっても良いことなのではないかと思うのです。

心地よく自分にやさしいサステナブルな暮らし 本当に欲しいと思う一生ものを選ぶ

もともとはお母様が使っていたもので、もらったのではなく「預かっている」状態なのだそう。ものを受け継ぎ、あるものを使い続けることが大切なこと。

お気に入りのカップ&ソーサーは割れたり、欠けたりするたびに、金継ぎ修理して長く使っている。

靴はフラットでシンプルなものを色違いで購入。必要以上には持たないので、靴箱の中はいつも一定の数しか入っていない。買い換えはしても買い足しはしないようにしている。

今の私のスタイルは「疲れない、心地よく楽しい暮らし」をすること。私は「買う」と決めてから、素材、質感、サイズをじっくり吟味。気に入るものが見つかるまで、妥協せずに探します。時間をかけながら納得して選んだものは、手に入れたときの喜びも大きくなるし、愛着もわくのです。

そうやって選び抜いたものは、自然と品質がよく、作りがシンプルで、傷さえも味になるような長く使い続けられるものが多いですね。

simple life in winter

5年ほど履いているフェルト素材のスリッパ。「足もとを暖かくすると、暖房も控えめですみますよね」と多仁亜さん。洗濯できるものを購入し、長く使うのがポイント。

ファッションは自然素材で家で洗濯できるものが基本。動きやすく、窮屈でないことも大切。冬はこうして綿入りの薄手のベストを着て、時にはスカーフを。ファッションをシンプルにして、スカーフをアクセントに。

ドイツではどの家庭にもある湯たんぽ。これは7年ほど使い込んでいるものだそう。

色々な用途に使える基本のものをそろえる

毎日の家事の基本である、お掃除やお料理をする際にも、シンプルで代用できるものを選んでいます。

例えばお掃除で活躍するのが重曹。キッチンまわりの研磨剤としてはもちろん、排水溝に振り掛けたり、洗濯する際に入れることで匂いをとったりと、何役もこなす万能なものを選ぶと無駄もなくなります。

また、日本の家には冷蔵庫にたくさんの調味料があふれかえっている印象があります。酸っぱいのか、甘いのか、しょっぱいのか、それさえわかれば代用できるものがきっとあるはず。使い切らない調味料や食材を無駄にするより、オリジナルの味を楽しめるくらいのほうがいいと思うんです。

時間をかけて受け継ぐ「もの」と「心」

私のシンプルな暮らしは、何年もの時間をかけて母から受け継いできたもの。今、夫の故郷である鹿児島での暮らしを通して、新たに受け継いでいきたいものがあります。

2009年の夏、夫の実家のある鹿児島に家を建て、1~2カ月に1回は東京から鹿児島へ帰ることにしました。そこでは夫の家族が代々暮らし、伝えてきたものがあります。亡き義母が執り行っていた冠婚葬祭や鹿児島のお料理、お菓子づくりなどを、帰るたびに義姉に習いながら覚えています。でもそれは一朝一夕でできるようにはなりません。毎年同じように季節のお料理やお菓子をつくり、行事をするなどの繰り返しにより、身につき、なじむもの。

長い時間をかけて受け継がれて来た伝統や文化。自分自身も時間をかけて身につけながら、次の世代に伝えられたらと思っています。

作ってみよう

ドイツの伝統的菓子シュトレン

© 石川 美香

シュトレンの材料 
約30×15cm 2個分

生地:
強力粉1kg、塩15g、生イースト100g、グラニュー糖 200g、牛乳155ml、卵4個(正味約280g)、無塩バター 450g(室温に戻す)
フィリング:
アーモンド(ホール/生)200g、レーズン400g、カレンズ100g、ミックスピール(オレンジやレモンの皮の砂糖漬け)150g、レモンの皮のすりおろし2個分、シナモンパウダー 大さじ1、ナツメッグのすりおろし 大さじ1、カルダモン 大さじ1、マジパン300g
仕上げ用:
無塩バター680g、粉糖 適宜

シュトレンのレシピ

◆1
強力粉は、大さじ2程度をとりおき、残りは塩と合わせて大きめのボウルに入れ、くぼみをつくっておく。
◆2
グラニュー糖の分量のうち大さじ3をイーストに加え、人肌に温めた牛乳を混ぜながら少しずつ注ぎ、なめらかにのばす。
◆3
[◆2]を[◆1]のボウルのくぼみに加えて、周囲の粉を軽く混ぜ、表面に膜ができないように強力粉を少しかけて、大きなビニール袋に入れてふわりと覆い、暖かいところに15分ほどおく。
◆4
アーモンドは150℃のオーブンで10~15分、香ばしくなるまでローストし、粗く刻む。残りのフィリングの材料と合わせて、[◆1]でとりおいた強力粉を混ぜてほぐす。
◆5
イーストがぶくぶくと泡立ってきたら、残りのグラニュー糖を少しずつ混ぜながら、全体の強力粉とも混ぜ合わせる。ほぐした卵も少しずつ加えて混ぜ、台に取り出してこねながらバターを適量ずつ混ぜ込む。両手でしっかりと手早くこねる。生地がべたつくようなら強力粉を加え、かたすぎるようなら牛乳(ともに分量外)を足してなめらかな生地にする。
◆6
生地をのばして[◆4]の1/4~1/3量を上に広げ、生地を両端からたたんでから軽くこね、再度のばしては[◆4]を同量混ぜ込むことを繰り返す。(フィリングの量が多いので生地からはみ出てくるが、こねながら混ぜ込んでしまうこと)。
◆7
[◆6]をまとめて油脂(分量外)を塗った大きめのボウルに入れ、ビニール袋で覆って、暖かいところに50~90分、倍量にふくらむまでおく。
◆8
マジパンを2等分し、転がして棒状にする。
◆9
[◆7]を台に取り出して軽くこね、2等分する。それぞれ約40×30cmの長方形にのばし、マジパンをのせて、その上に生地をかぶせるようにして折り、端を押さえてしっかり形を整える。ベーキングペーパーを敷いた天板に並べ、ビニール袋に入れてふわりと覆い、再度暖かいところにおく。
◆10
50~90分、約1.3倍量になるまで発酵したら、180℃に温めたオーブンで40分ほど全体に焼き色がつくまで焼く(上が焦げつかないように火を加減したり、途中からアルミホイルをかぶせたり、庫内が小さいときは途中で下段に移したりして注意する)。竹串を刺して焼き上がりを確認する。
◆11
取り出して仕上げ用のバターの1/3量をとかし、はけで塗るようにしてしみ込ませる。
◆12
完全に冷まし、ベーキングペーパーとアルミホイルできっちり包んで一晩おく。
◆13
翌日に180℃のオーブンで10分温め、残りのバターの半量をとかして塗り、冷まして[◆12]と同様に包む。翌日にもう一度同じことを繰り返し、完全に冷めたら粉糖を網でふるいながらたっぷりかけて保存する。1週間ほどおいてからいただく。

ワンポイントアドバイス

保存は涼しい場所で。乾燥しないように注意することで3週間は楽しめます。薄くスライスして、軽くトーストすると、より美味しくいただけますよ!

門倉 多仁亜(かどくら たにあ) さん

1966年神戸生まれ。国際基督教大学を卒業後、証券会社勤務。結婚後、夫の留学に伴いロンドンへ渡り、コルドンブルーへ入りグランディプロムを取得。帰国後、料理教室を始める。現在は料理研究家としてテレビや雑誌で活躍するほか、ドイツのライフスタイル全般を紹介。鹿児島と東京の家との2拠点生活を楽しんでいる。
著書に『タニアのドイツ式部屋づくり』『タニアのドイツ式キッチン』(ともにSBクリエイティブ)など。

※2013年12月発行 冊子「SMA×ECO plus」vol.6より転載

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