SMART ECO-TOWNS サステナブルな街 パリ(フランス)

写真提供:日経BPクリーンテック研究所

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サステナブルな街 特集

二酸化炭素排出低減だけでない パリのEVカーシェアリングとは?【前編】

後編:二酸化炭素排出低減だけでない パリのEVカーシェアリングとは?【後編】

パリ(フランス)

2016.09.21(2014.12.17記事再掲)

ヨーロッパ有数の巨大都市であるパリ市は、世界に先駆け2012年より電気自動車(EV)を用いた大規模なカーシェアリングサービスを本格的にスタート。

このサービスは、二酸化炭素(CO2)排出低減だけではなく、雇用創出や移動の利便性向上など、多くの利点を生み出すサステナブルな事例として、世界的に注目を集めています。どのようなコンセプトで、どのように運用されているのか?このプロジェクトのポイントを探っていきます。

※ 文中の料金、利用者数などは全て2014年12月時点のものです。

安価で便利なEVカーシェアリングが「街乗り」として定着

世界の大都市は、自動車を始めとする交通問題に苦しんでいます。フランス・パリ市も同様で、自動車から排出される二酸化炭素(CO2)の削減と、慢性化している交通渋滞の緩和という課題を抱えていました。

これらの課題を解決すべく始められたのが、電気自動車(EV)を利用したカーシェアリングサービス「オートリブ(Autolib’)」です。よりクリーンな環境実現への貢献だけでなく、多くの相乗効果をもたらし、サステナブルな暮らしを支えています。

オートリブの最大の特長は、これまでカーシェアリングでは難しいと言われてきた「ワンウェイ(乗り捨て)型」を採用したこと。利用料は個人向け年会員(※1)の場合で30分5.5ユーロ。1日利用の場合でも30分毎に9ユーロで、国際運転免許証を利用し、観光客も気軽に利用しているそうです。支払いは30分単位のため、ちょっとした移動にも気軽に利用できます。

※1 年会費:120ユーロ

オートリブ利用方法
[左]まずは、カーステーションの端末で貸出処理を行う。[右]貸出処理後、指定されたEVの充電プラグを引き抜いて、カーステーションの充電器に戻し、乗車。

写真提供:日経BPクリーンテック研究所

EVを停めておくカーステーションは、公的に縦列駐車が認められている車道脇のスペースを利用。約900ヶ所(2014年11月時点)のカーステーションが設けられ、パリ市内であれば、徒歩5~6分間隔で配置されています。一つのステーションには、4~7台分の駐車スペースと充電器があり、24時間利用可能です。

安価で使いやすく、便利な交通システムは「街乗り」としてすっかり定着。個人がそれぞれ自動車を保有するという、生活スタイルそのものが見直されるきっかけになっているようです。

当初、運営側では平均利用回数を週2回と想定し、単年度の損益分岐の会員数を約8万人としていました。しかし、一人当たりの利用回数が予想を上回ったため、損益分岐の会員数は5万~6万人に下がり、既に約6万人の利用者登録があります。

ICT活用でワンウェイ型カーシェアリングの課題を克服

さて、このプロジェクトは、官と民が連携して公共サービスを行う「PPP(パブリック・プライベート・パートナーシップ)」というスキームで取り組まれています。

事業開始にあたっては、まずプロジェクトに参加する47の自治体でオートリブ事務組合を設立。基本的なサービス形態などを定めた上で、運営と経営を行う企業を募集。競争入札の結果、運輸・エネルギー関連の大手企業、ボロレ(Bolloré)社が落札しました。

充電設備や情報通信システム、EVなどへの初期投資は約2億ユーロで、そのうち約5000万ユーロは事務組合からの補助金です。事務組合は、EV1台につき750ユーロのステーションスペース利用料を、毎年ボロレ社から受け取ります。これにより、長期的に補助金を回収できる仕組みになっています。

運営と経営は民間企業であるボロレ社が行い、事務組合は監視役を務めながら、事業収益の30%を得ていくという体制の下で、事業は進められていきます。

また、オートリブの実際の運用を支えるのが、ICT(情報通信技術)を駆使したネットワークシステム。下図のように、管理センターでは、蓄電池情報などを遠隔で監視し、GPSを使ってEVの位置も把握します。また、利用者はインターネットや携帯電話を通じて、各カーステーションの駐車状況が分かるようになっています。

ICTを活用したオートリブの仕組み

また、EV内のナビでもカーステーションの状況が分かるので、カーシェアリング中に停車できる場所がどこなのか迷う心配はありません。全ての状況をリアルタイムで把握し、利用者にフィードバックすることで、ワンウェイ型のカーシェアリングを実現しているのです。

[左]EVのナビ画面。目的地近くのカーステーションを検索してナビゲーションすることが可能。地図上の数字は各カーステーションの空車数を表している。 [右]車内の様子。

写真提供:日経BPクリーンテック研究所

2014.12.17記事再掲

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