SMART ECO-TOWNS サステナブルな街 マスダールシティ(アブダビ)

マスダール科学技術研究所の学生向け居住棟。壁面には砂嵐に強いガラス強化コンクリートを利用している。

写真提供:日経BPクリーンテック研究所

街

サステナブルな街 特集 砂漠のなかに生まれた近未来都市「マスダールシティ」

マスダールシティ(アブダビ)

2016.09.28(2014年9月記事再掲 ※)

アラブ首長国連邦(UAE)の首都、アブダビ。ここで、サステナブルな暮らしを求め2006 年から建設が始まっているスマートシティの計画があります。二酸化炭素排出量ゼロを目指す、砂漠の真ん中に出現した未来型実験都市「マスダールシティ」を覗いてみましょう。

マスダールシティ Abu Dhabi. U.A.E.

灼熱の砂漠を冷やす自然エネルギー

シャルジャ、アジュマン、ウンム・ル・カイワイン、フジャイラ、ラアスル・ハイマ、ドバイ、そしてアブダビという7つの首長国が集まり形成されたアラブ首長国連邦(UAE)。ここで紹介するマスダールシティは、その首都、アブダビへの玄関口、アブダビ国際空港からすぐの、砂漠のど真ん中で建設が進むスマートシティです。

面積は6.5平方キロメートル、人口約5万人になる予定で、この巨大都市開発プロジェクトは、ムハンマド皇太子指揮のもと、2006年にスタートしました。2020~2025年にかけて完成させるとされています。

マスダールとはアラビア語で「源泉」を意味する言葉。アブダビといえば最高気温が50℃、通常でも40℃を超える都市ですが、この砂漠の地で、資源をフル活用してサステナブルな社会をつくるという計画なのです。

ここでは、自然の力を利用しながら、街全体の気温調節が行われています。

2010年9月にはマスダールシティの第1期プロジェクトである、マスダール科学技術研究所(以下、MIST)の6棟が完成。ここには学生向けの居住ビルや、本部となるナレッジセンター(図書館)、そして研究所があり、各ビルの屋根には太陽光発電パネルと太陽熱温水器が設置され、施設内で使用するほとんどの温水と30~35%の電力を供給しています。

マスダール科学技術研究所の中庭。植栽が整備され、人が集まる場所になっている。

写真提供:Masdar City

そして、MISTの中庭にそびえる「ウインドタワー」。このタワーの上から風を取り込むことによって、MIST内の温度を平均で6℃も下げることができます。このタワーのもう一つ重要な役目は、居住ビルの消費電力量を見える化するシンボルとなっていることです。四隅にはLED照明が設置されており、省エネ目標(アブダビの一般家庭の平均より50%以上省エネ)を達成した場合は緑色、未達成の場合には赤色に点灯して、居住者の省エネ活動を推進する仕掛けも施されています。

マスダール科学技術研究所のナレッジセンター(図書館)。屋根が手前に大きくせりだしているため、効果的に日陰をつくることができる。

写真提供:Masdar City

中央に立つ塔が中東の伝統建築「ウインドタワー」を現代風に改良したもの。上空の風を冷気に変えて地面に吹き付ける仕組み。

写真提供:Masdar City

また、MISTのビルにはウインドタワーと同じ原理で、風が通りやすい流線形を中心とした建築を組み込んだり、太陽光を遮断しながら光が取り入れられるように外壁や開口部を設計するなど、単に再生可能エネルギーを生み出してそれを使うだけでなく、より自然の力を活用する工夫もされているのです。

CO2を排出しない、世界初のゼロエミッション交通網

無人で走る電動コンパクトカー

マスダールシティではガソリンで動く自動車の使用が認められていません。公共交通機関としては、2種類の電気自動車が使われています。1つは電気自動車(EV)。もう1つがシティ内に敷設した軌道上を無人運行する「個人用高速輸送機関 (Personal rapid transit: PRT)」。2人掛けシートが対面するゴンドラのようなスタイルで、行き先を入力するタッチパネルを操作すると、最高時速40kmで走行し、到着地まで自動運転してくれます。まるで、未来の都市にタイムスリップしたかのような最新技術が導入されているのです。

Personal rapid transit

シティ内を走る無人運転のPRT。

写真提供:日経BPクリーンテック研究所

シティ全体の電力を供給する“再生可能エネルギー”プロジェクト

太陽熱で100MW発電!

ここでは、シティ内で使われる電力のすべてが太陽光発電や太陽熱発電などの再生可能エネルギーでまかなわれています。世界有数の原油埋蔵量を誇るアブダビが、石油や天然ガスなどの化石燃料を一切使わない「ゼロカーボンシティ(二酸化炭素排出量ゼロ都市)」を目指しているのです。

また、代表的な再生可能エネルギープロジェクトとしては、マスダールシティ全体の電力を供給する外部システムとして、南西に約120km離れた砂漠に設置された集光型太陽熱発電所「Shams(シャムス)-1」があります。Shams-1は2013年3月に稼働を開始し、当時における世界最大規模の発電量100MW(メガワット)を誇ります。さらに、UAEでは溶融塩を使うことで熱を保存し、24時間稼働を可能にした太陽熱発電プロジェクト「ゲマソーラー」や、ドイツの電力大手E.ON社と共同で投資した「ロンドン・アレー洋上風力発電プロジェクト」などの再生可能エネルギープロジェクトも進んでいます。今後は技術の進歩とともに、蓄電池システムの開発も視野に入れています。

100MWの発電量を誇る太陽熱発電所、Shams-1。集光した熱でタービンを回して発電する仕組み。

写真提供:Masdar社

UAEといえば、「オイルマネー」に象徴されるように、石油産業が盛んな資源に恵まれた国というイメージがあったのではないでしょうか。現在でも高級リゾートとして人気のドバイを抱える、経済的にも文化的にも豊かな国ですが、そのUAEに誕生しつつあるマスダールシティは、完成すれば石油に代わる新たな経済モデルとなるだけでなく、世界中のお手本となる究極のスマートシティになりそうです。

※2014年9月発行 冊子「SUSTAINABLE JOURNEY」vol.1(ecomom秋号同封)より転載

RECOMMEND おすすめコンテンツRECOMMEND おすすめコンテンツ

このページの先頭へ