TOPICS 里山の文化、暮らしを未来へつなぐ

「にほんの里100選」(2009年)に選ばれた葉山町の棚田の風景。

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里山の文化、暮らしを未来へつなぐ
〜ふるさと絵屏風プロジェクト(神奈川県三浦郡葉山町)〜

2016.08.30

「にほんの里100選」(2009年)に選ばれた葉山町の上山口地域。しかし、時の流れとともに趣のある風景や文化がなくなるという危機感がありました。そこでスタートしたのが「ふるさと絵屏風プロジェクト」です。プロジェクトを進めてきた、ふるさと絵屏風継承会 会長 岩澤さんと大和ハウス工業 CSR部 岩橋にその想いを聞きました。

ふるさと絵屏風とは?

地域に住む高齢者の記憶を集めて「心のふるさと」を絵にした屏風のこと。絵屏風を通じて、昔からの風景や地域らしい文化・伝統を後世に伝えたいと願っています。

ふるさとへの愛着を育み 未来につなげるプロジェクト

上山口地域・隣接する木古庭(きこば)地域の里山は先代の人々が自然と共生していくために手を入れ、大切に育てられてきました。しかし、農業の後継者不足や地域住民の高齢化にともない、休耕田が増え、手入れが行き届かない山々が荒廃するなど、課題が山積みに。

「何かしなければ、里山や伝統文化がなくなってしまうという危機感がありました」(岩澤さん )。

2012年、2つの町内会を主体に、関東学院大学の学生、大和ハウス工業との協働で、里山の文化、暮らしを未来につなぐための「ふるさと絵屏風プロジェクト」が立ち上がりました。そして活動は広がり、約3年で延べ1500人が関わるものに。

「立場や年齢も社会観もまったく違う人が集まるなかで、あらためて地域の生い立ちや伝統文化、里山の魅力を振り返ることができたのは、とても大きなこと。昔の思い出話に花を咲かせ、生き生きとしている高齢者が多くいらっしゃったのも印象的です。プロジェクトを通して、ふるさとを愛する気持ちを再確認できした」と岩澤さんは語ります。

ふるさと絵屏風ができるまで 制作過程では、多世代・地域内外の交流が生まれました!ふるさと絵屏風ができるまで 制作過程では、多世代・地域内外の交流が生まれました!

2012年

聞き取りを開始!

地域の高齢者に、昔を思い出す風景や匂い、手触りなどを聞く「五感体験アンケート」を実施。その後、五感にまつわる思い出話を聞く「聞き取り会」を実施しました。

2013年

里山を歩く

関東学院大学の学生と地域住民とで、地域の里道を歩いて回り、里山の雰囲気や匂いを体感。里山の素晴らしさに、あらためて気づくきっかけとなりました。

2014年

下絵を描く

絵屏風の下絵となる約300枚の絵コマを描きました。学生は、地域住民から集めた昔の写真を見ながら下絵を描き、わからないことは地域の人に聞きます。

2015年

絵師が装飾

地域に住む絵師3人が、風景、動植物、人などと分担し、表装された和紙に絵を描きました。白黒の下絵では表現できなかった色を再現するため、あらためて調査が必要でした。

2015年

完成!お披露目式

2015年4月に絵が完成。その後、完成した絵屏風がお披露目されました。地域住民の方々は絵屏風を見ながら懐かしい里山の風景、暮らしを思い出し、昔話に花を咲かせていました。

自然と人とのつながりを後世に伝えていく

完成した絵屏風には、地域に急激な変化が訪れた昭和30年代の里山の様子や人々の暮らしぶりが春夏秋冬を通して描かれています。

一方でこのプロジェクトは、絵の完成だけがゴールではありません。2015年3月、絵屏風を活用して地域の文化や伝統を後世に伝えることを目的とした「ふるさと絵屏風継承会」と「語りべの会」が発足。今度は、絵屏風に描かれた内容を解説し、地域文化を発信していく活動や、地域の自然や歴史、暮らしについて語り合い、地域の未来を育てていく活動が始まりました。

「里山の自然の美しさは、代々人々が手を入れて愛しんできたから、さまざまな環境変化を乗り越え生き続けているもの。人々が自然と関わり、里山の恩恵にあずかっていることを、今後も広め続けていこうと思います」(岩澤さん)。

「全国に拠点がある大和ハウス工業だからわかる、各地のさまざまな取り組みの情報を提供していき、次につなげる地域づくりに貢献できたら嬉しいです」(岩橋)。

冬秋夏春
春

桜が咲く山の麓に描かれているのは、屋根の葺き替え。当時は隣近所が手伝いに集まり、ちょっとしたお祭りのようだったという。耕起作業の機械化が進んだ時期で、牛で耕す田と機械で耕す田が両方描かれているのも特徴的。

夏

川に架かる橋の上には、夏の風物詩だったというアイスキャンデー売り。農作業を手伝う子どもたちにとって、「チリンチリン」という鈴の音は、心が躍るほど嬉しいものだったそう。

秋

一番手前の家では、地域の人々が話し合いや親睦のために集まる「寄り合い」が行われている。料理や酒を振る舞うため、各々の家が順番で受け持つ。当時、ひょっとこ踊りをよく踊った人がいたとのことで、面白く表現されている。

冬

収穫した大根を洗って干し、漬け物にする人々や、餅つきを楽しむ人々など、慌ただしい年の瀬の行事が描かれている。コマ回しや羽根突き、凧上げに雪遊びなど、子どもたちがどんな遊びをしていたのかもよくわかる。

今 昔

昔から残る自然林に囲まれた滝。

今 昔

澄んだ湧水には緑の藻がみえる。

「ふるさと絵屏風」を使い 子どものふるさと愛を育む

発足したふるさと絵屏風継承会では、地域の未来を引き継ぐ子どもたちや、子どもたちに一番影響のある親たちにも地域の文化を学べる機会を増やす試みを進めています。

「近隣の小学校と協議して進めている『ふるさとカルタ作り』があります。里山の自然や暮らしが描かれた絵屏風から100コマを選び、それを見て子どもたちが言葉に表現する。その過程を通して、ふるさとの大切さを知ってもらいたい。大人たちにも、絵屏風鑑賞会や梅干し作りを実施して対話をしていく予定です。私たちの町は“ふるさと絵屏風があるまち”と子どもたちが、胸を張って言えるように絵屏風を通じて、地域のつながりや自然の大切さを継承していきたいです」と岩澤さんは語ります。

右から、ふるさと絵屏風継承会 会長 岩澤直捷さん。大和ハウス工業株式会社 CSR 部 岩橋芳郎。

2015年9月発行 冊子「SUSTAINABLE JOURNEY」vol.3(ecomom秋号同封)より転載

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