トップコミットメント社長メッセージ

代表取締役社長 CEO 芳井 敬一

“生きる” 場所を提供するという使命を再確認

2020年度は、人類にとってパンデミックとの闘いに終始した一年でした。そのようななか、人々の生活に必要なものが価値を高め、当社グループは衣食住のうちの住を提供している会社なのだという事実やその使命に改めて気づかされました。在宅勤務が普及したことでオンとオフの区別がなくなり、家は今や帰って憩う場所ではなく、“生きる”場所となりました。私たちはこの変化に対応し、人々が“生きる”ための場所づくりをお手伝いしていかなければなりません。

そのような変化を象徴する事例のひとつが、Webサイト限定の戸建住宅商品「ライフジェニック」の好調ぶりです。「ライフジェニック」は、お客さまにWebサイトで6つの質問に答えていただき、その回答をもとに外観やインテリアを提案する新しい販売形態の商品です。2019年10月の発売当初はそれほど注目されていたわけではなく、問い合わせの数も月に3万件ほどでした。ところが、昨年4月に緊急事態宣言が発令された頃から問い合わせが増え始め、ピークの5月には月に20万件を突破。販売戸数も2021年4月現在、700戸を超えています。感染拡大防止の観点から、従来の住宅展示場による集客が否定されるなか、実験的に販売した商品がお客さまのニーズと合致し、ピンチをチャンスに変えることができたのです。

また、事業施設分野では、商品をお届けするアンカーとしての物流の大切さが見直され、社会における物流施設の重要性が高まりました。物流施設は工場以上に雇用を生むほか、自然災害などの発生時には避難所や復興基地としての役割も担えるため、まちづくりにおいても重要な要素となっています。データセンターも、仕事や生活のオンライン化の進展に伴い、需要が急増しました。共に、以前から注力してきた分野が脚光を浴びた形で、今後ますます取り組みを強化していく予定です。

当社グループは、2019年に諸問題を起こしたことを深く反省し、事業のあり方を根本から見直してきました。コロナ禍が起きたのは、まさにその成果が現れつつあったタイミングで、さまざまな面で改革が進んでいたことから、影響を比較的小さく抑えることができました。従業員が心をひとつに未曽有の事態に立ち向かってくれたことや、幅広い事業ポートフォリオを有していることなど、当社の強みを十分に発揮できたと考えています。

苦境に正面から立ち向かい、DXで建築業界の未来を拓く

もちろん、コロナ禍による影響が全くなかった訳ではありません。2020年4月には、7都府県に緊急事態宣言が発令されたことをふまえ、全国の施工現場の一時休工を指示しました。「何よりも守るべきは、人の命である」との考えから下した決断ですが、工事を止めれば、当社だけではなく現場の作業員の方々の生活にも影響を及ぼしてしまいます。そこで、協力企業に対しては、休工期間中に予定していた工事に対する費用補償を実施することをあわせて決定しました。当社グループには、協力企業の方々と「共に歩む」という創業者精神が深く根付いており、速やかに決断することができました。

一方、社内では働き方改革やDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進に取り組みました。働き方改革については、東京オリンピック開催に向けた政府からの要請もあり、コロナ禍が発生する前からさまざまな施策を講じてきました。それが図らずも一気に加速することになりました。実際にテレワークなどを実施してみてわかったのは、家で仕事をすることの難しさです。従業員からもオンとオフの切り替えが難しいといった声が上がり、仕事の場を家だけに限るのは無理があると実感しました。そこで、事業所を数多く設けている都市部では、本来の職場をホームグラウンド、家から最も近い事業所をサブグラウンドとして使い分ける取り組みも試行中です。このように、多様な働き方ができる環境を整えることで、働きがいの向上や多様な人財の活躍につなげていこうとしています。

DXの推進については建設現場の無人化・省力化を目指して、3次元で建物のデジタルモデルを作成し、企画から設計・生産・施工・管理までの工程を一元管理する「BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)」の導入などを進めています。もともとは人口減による人手不足への対応を目的として始めた取り組みでしたが、ウィズ・コロナの時代における新常態として、改めてその重要性を確信しました。システムが完成した際には、当社だけではなく業界全体で使っていただけるよう情報をオープンにし、「建築の工業化」を掲げる企業として、建築業界の未来に広く貢献したいと考えています。

事業本部制導入で目指す、攻めと守りのバランス経営

また、新たな取り組みとして、国内事業を7つの事業本部に再編し、関連するグループ会社を傘下に置く事業本部制を2021年4月から本格的に始動しました。その目的は、各事業本部長に権限と責任を委譲することで、よりスピーディな事業運営やガバナンスの強化につなげることにあります。

各事業の規模やグループ会社の数が拡大し続けるなか、従来の事業部制や支店制では、事業の成長にガバナンス体制が追いつかず、責任の所在が曖昧になりがちでした。また、事業部とグループ会社は横並びの関係で、相互の連携もうまく機能していませんでした。そこで、事業本部制の導入により、責任の所在を明らかにして守りを強化するとともに、傘下に入ったグループ会社との間で積極的にシナジーの創出を図り、攻めと守りのバランス経営を目指します。

今後は、各事業本部のトップが事業機会を見逃していないかや、現場の声を吸い上げられているか、そして、明確なビジョンを抱き、自らの発言に責任を持って事業を推進しているかといった点を注視しながら、各事業本部において新たな価値の創出に挑戦してまいります。

人財育成は、持続的成長に向けた最優先課題

当社グループは「売上高10兆円の企業になる」という夢を創業者から託され、創業100周年にあたる2055年の達成を目指しています。この長期的な目標の実現に向けて、私の代で責任を持って成し遂げようとしていることが、人財育成です。特に、次代の当社を担う経営人財の育成が最優先課題であると認識しており、ヘッドハンティングなどに頼ることなく、目標達成に十分な数の、力あるメンバーを揃える考えです。そこで、経営人財を育成するための環境や仕組みづくりに、大きな力を注いでいます。

今回、パンデミックという特殊な状況下に置かれたことで、後継者候補である各事業本部のトップの考えがよくわかりました。人の真価は、不測の事態が起きた時にこそ試されます。目の前の事象だけを追いかけるのではなく、先の先を見据えてビジョンを描き、行動できる人間かといったことが確認できたのは、今後の育成や登用などに活かせる大きな収穫でした。

一方、人財の多様性という点では、当社は他社に類を見ないほど多様な人財が働いている会社だと認識しています。従業員の国籍は30ヵ国以上にのぼり、経営陣も含め中途採用の社員も多数活躍しており、それぞれ学歴や職歴もさまざまです。ただ、管理職の女性比率については、いまだ低水準にとどまっています。しかし、若い世代には優秀な人財が育ってきており、いずれ男女比が逆転してもおかしくありません。取締役会など、意思決定の場における多様性の強化にも積極的に取り組んでおり、当社グループが理想とする多様性をじっくりとつくりこんでいきたいと考えています。

また、コロナ禍の影響で約半年遅れとなりましたが、2021年秋には新たな研修施設「みらい価値共創センター」が奈良にオープンします。日本最大級の規模であるという点が注目されがちですが、私自身は、大切なのは中身だと考えています。受講者を惹きこむ魅力ある研修メニューを揃え、内容が陳腐化しないよう、半年ごとに刷新していく予定です。そして、社員だけではなく、そこで清掃などの仕事に従事してくださっている方々や地域の皆さま、近隣の小学生など、誰もが気軽に足を止めて学べる開かれた施設にしていきたいと考えています。特に、こどもたちがここで何かをつかみ、夢を叶えるきっかけにしてくれるようなことがあればと、楽しみにしています。

人々と「夢」を共有し、世の中の役に立つ企業であり続ける

このように、当社グループはさらなる成長を目指して邁進していますが、単に数字だけを追いかけるつもりはありません。問われているのは10兆円企業への「なり方」であり、その前提として大切にしなければならないのが、「儲かるからではなく、世の中の役に立つからやる」、「先の先を読む」、「夢」といった創業者が掲げたキーワードです。企業が生き残るには、社会から必要とされる存在であることが大前提であり、大和ハウスグループは世の中の役に立ち、人々の夢を実現するために、尽力し続けなければなりません。

その一例が、当社が過去に手がけた住宅団地の「再耕」です。これまで私たちはお客さまに「夢」を提供し、数多くのマイホームタウンを創り上げてきました。それらのまちが時を経て、住民の高齢化などにより多くの課題を抱えているのに対応せず、よそで新たなまちを創り続けるのは無責任です。かつて私たちが夢を提供した方々が現在抱えている課題と真摯に向き合い、夢の第二章を紡ぎたい。そのような考えのもと、「リブネスタウンプロジェクト」を推進しています。すでに兵庫県三木市や神奈川県横浜市などの住宅団地で、多岐にわたる実験的な取り組みが進行中です。当社グループが総出で知恵を絞り、さまざまな事業のノウハウを活かすことで、それぞれのまちの新たな魅力を創りだし、まちに再び活気を取り戻したいと考えています。

「待ったなし」の対応が求められるなか、“脱炭素”を前倒しで推進

長期的かつ持続的な企業価値の向上に向けては、環境への取り組みも極めて重要です。年々、気候変動を原因とした気象災害の規模や頻度が増大しており、まさに「待ったなし」の対応が求められています。そのようななか、当社グループは環境負荷ゼロを目指す環境長期ビジョン“Challenge ZERO 2055”のもと、特に脱炭素社会の実現に向けた取り組みに注力しています。国際イニシアティブのSBT・EP100・RE100に参画して温室効果ガス排出量の削減やエネルギー効率の向上、再生可能エネルギーの利用率向上に努めてきた結果、2020年度には当社グループの再生可能エネルギー発電量が電気使用量を上回り、2030年に設定していた目標を10年前倒しで達成することができました。今後は昨年10月に発表された政府の方針を受け、2055年に設定していた目標を見直し、「2050年までに温室効果ガス排出量の“ネット・ゼロ”」を目指します。一方、自社の脱炭素への取り組み成果を事業の競争力向上に活かし、ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)やZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)の推進、ゼロエネルギーを達成する新しいまちづくり「コ“Re”カラ・シティ」の展開、環境エネルギー事業の拡大など、事業を通じた環境への貢献も一層加速させていきます。

真摯に社会課題に向き合うことで“愛される大和ハウスグループ”へ

当社グループは「世の中の役に立つ」ために事業を行っており、重点課題の筆頭にも「社会課題を起点とした事業機会の拡大」を掲げています。これは創業以来追求してきた事業の根本を成す精神であり、今後も変わることはありません。コロナ禍に揺れる今だからこそ、「何が求められているか」を真摯に考え、時代の先の先を見据えつつ、社会課題の解決を企業価値の向上につなげてまいります。そして、“人々に愛される大和ハウスグループ”であり続けるために、まずは従業員一人ひとりがこのグループで働いていてよかったと誇りを持ち、笑顔でいられる会社を目指します。ステークホルダーの皆さまにおかれましては、今後も引き続き変わらぬご支援を賜りますよう、心よりお願い申し上げます。


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