エネルギーゼロの街づくり

風と太陽と水による発電事業

有識者ダイアログ ZEH・ZEBの実現と今後の普及に向けて

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大和ハウスグループでは、2010年から「エネルギー“ゼロ”の住宅・建築・街づくり」をテーマに、3つのプロジェクトを立ち上げ、取り組みを進めてきました。今回、サステナブル建築の第一人者である芝浦工業大学の秋元教授を迎えて、「ZEH・ZEBの実現と今後の普及に向けて」と題し、当社技術部門の各責任者とともに、今後の普及段階に向けての課題と対策などについて話し合いました。

開催日時

2015年5月8日

場所

大和ハウス工業東京本社

当社出席者

総合技術研究所 所長 兼 住宅商品開発部 統括部長
有吉 善則

企画開発部 部長
吉田 雅一

東京都市開発部 開発部 部長
大江 斉
他2名

有識者

芝浦工業大学 工学部
建築工学科 教授 秋元 孝之様

【略歴】
関東学院大学工学部建築学科を経て、2007年より現職。
専門分野は建築設備、特に空気調和設備および熱環境・空気環境。

住宅 多くのベストプラクティスを生み出し、ゼロエネルギー住宅・建築市場を牽引してほしい。 ―秋元 コストダウンはもちろん、快適性や健康、安全・安心といった付加価値を追求します。 ―有吉

秋元 ZEH・ZEBに関しては、新築では2020年、2030年をターゲットに標準化していく方向性が国から示されています。ZEHについては大手住宅メーカーではすでに普及期の入り口といって良いでしょう。ZEBについては延べ面積に対して創エネを担う屋根面積が小さく実現が難しいといわれていますが実施例も生まれています。ニアリーZEB、ZEBレディ※1といった考え方も取り入れながら、大和ハウス工業などの住宅・建設大手には、多くのベストプラクティスを創出し市場を牽引していってほしい。エネルギー“ゼロ”の住宅・建築・街づくりに挑む3つのプロジェクトはまさにそこが使命であり、さらなる発展を期待しています。

DH 当社の新築住宅におけるZEHの割合は、厳しい定義で見た場合で2割強ですが、ZEHの実現には初期投資コストが大きく、補助金頼みという側面は否めません。補助金が未来永劫続くわけではないため、機器類のコストダウンを進めることに加え、快適性や健康、安全・安心といった付加価値を高め、補助金がなくても市場に受け入れられる商品にしていく必要があります。

秋元 補助金なしでもゼロエネルギー住宅の価値や魅力が認められる市場が形成され、住まい手がきちんとそれを使いこなしていく社会をつくらなければなりません。その意味でも、ウェルネス※2は一つのきっかけになるでしょう。断熱改修した家では起床時の血圧が高くならず脳疾患になりにくいといった研究成果も出ています。また非常時にも生活を継続できることは住まい手にとって大きな価値でしょう。こうしたノンエナジーベネフィット(NEB)※3をしっかりと生活者に伝えることも重要です。

DH 確かに健康はお客さま価値に直結しており、価値が見えやすいですね。私たちは、これらNEBである付加価値の検討を進めながら、まずは、安全・安心の観点からエネルギーを地産地消する分散型エネルギー社会を見据え、蓄電池を活用した「エネルギー自給住宅」の開発を進めています。省エネを進め、創エネ量を増やせば、ネット・ゼロ・エネルギーは実現できますが、季節や天候、家族構成の変動などがあるなかで、最適な余裕・調整幅(バッファ)をどう設計するかが最大のポイントと考えています。来年度には、豊田市の分譲地でエネルギー自給住宅の実証を始める計画で、お客さまにも実際使用していただきながら、商品化に向けた検証を進める予定です。

  • ※1 完全にゼロを目標とすることは難しいがZEBに近い建物のこと
  • ※2 心身の健康維持や増進を積極的に図ろうとする生活態度や行動のこと
  • ※3 知的生産性や災害時の機能維持、健康などの省エネ対策がもたらす間接的便益のこと

建築 環境性能の高い建物・住宅が高く評価され、きちんとお金が回っていくような市場を創っていかなければなりません。 ―秋元 新しいビジネスモデルを創り込み、東京オリンピックを起点に日本の環境建築を世界中に広めたい。 ―吉田

秋元 スマート化のキーとなるHEMSやBEMSについては、すごく期待が大きい反面、集めたデータを正しく判断する知恵者というか目利きがいないとうまく機能しません。大和ハウス工業には、こうしたソフト面での取り組みも引っ張っていってほしいですね。

DH ビッグデータの分析、解析については、我々建設業は不得手な部分がありますが、分譲地の一部で「省エネアドバイス」のレポート配信の実施や、自社オフィスでの実証プロジェクトでは大学機関と協力してエネルギーデータの分析・解析を進めています。もう少し用途や数を増やしてデータを取り、お客さまへもフィードバックできる仕組みをつくっていきたいですね。ただし、事業用施設の場合は、やはり利回りが最優先され、環境は後回しにされがちです。企業の中では保有資産のオフバランス化も進んでいて、所有者と利用者が別々といったこともZEB実現の阻害要因の一つです。

秋元 事務所ビルやテナントビルでは、当然一番利回りのいいデザインを考えますよね。しかし、地球環境への配慮に反対する人はいません。CASBEE※4やBELS※5といった建物の環境性能を評価する手法も普及しつつあり、J-REIT※6などの証券化が進むなか、環境性能の高い建物・住宅等が本当に高評価され、きちんとお金が回っていくような市場を創っていかなければなりません。2020年の東京オリンピックでは、世界中の目が日本に向きます。そのときに、きちんと見せられるようにしておきたいですね。

DH そういう意味では、「ニーズがない」と足踏みするのではなく、例えば環境性能の高い建物への税金の軽減や、ローン金利の優遇といった、お金を回す仕組みづくりなどにも我々民間企業からいろんなアイデアを出して、行政とも連携しながら新しいビジネスモデルを考えていく必要があります。その結果、東京オリンピックが世界に向けた環境都市のショールームとなり、日本の環境建築を世界に普及させることができれば、地球環境にとっても企業にとっても大きな意味があります。

街づくり こどもたちに自然の風や太陽の光が快適だということを体験させていくことも重要です。 ―秋元 周辺街区との関係性も意識し、地域の自然を活かした街づくりを進めます。 ―大江

秋元 ここまで話を進めてきて気付いたのですが、例えば我々の世代であれば、自然の風や太陽の光は快適だという原体験があります。現代のこどもたちにもそういう経験ができる住宅や建築を創らないと、それを知らずに一生を過ごすことになるかもしれません。これらをきちんと体験させていくのも我々の役目ではないでしょうか。

DH 大阪の堺市晴美台で取り組んだスマートコミュニティ開発の事例では、その街の地域にどれぐらい卓越風が吹いているのか、どの方向から吹いているのかをシミュレーションし、それをできるだけ街の中に取り込もうと、土地利用計画の段階から意識して取り組みました。家の中でも吹き抜けや欄間ウィンドウ※7などを利用して、街に流れる風をいかに宅内に取り入れるかに配慮しました。

秋元 国土交通省の省CO2先導事業にも選定された晴美台の分譲団地の事例は、ネット・ゼロ・エネルギー・タウンを実現した先駆的な取り組みですが、一からつくる街だからこそできた部分もあります。既成街区をどのように変えていくかは、すごく重要な問題で、開発街区から既成街区へどう広げていくのか、すでに全部でき上がっているところをどう変えていくのかは、とてもハードルが高いテーマです。街の一生を考えると人間の一生とは異なる時間軸も出てきます。そこを企業としてどう考えるのかといったメッセージも必要です。

DH 住宅や建築物は、一度建てると長期にわたって使用され続けます。今年建てた建物は2100年にも残っているかもしれません。ですから、特に個々の建物については、まず新築時にしっかりとした性能を持った住宅や建築を提供するのが最大の使命です。ただし、街づくりでは周辺の既存街区との関係性は抜きにできません。現在、兵庫県で過去に提供した住宅団地の再活性化事業に着手し始めましたが、住民のみなさまと定期的なワークショップを行い、今後の街の方向性を議論しています。これは、今後知見を積み上げていかなければならない領域ですが、一つひとつ成功事例を積み重ね、住宅ストックの質の向上についても責任と役割を果たしていきます。

  • ※7 居室のドア上部などに通風を確保するために設置する窓のこと

ダイアログを終えて

初期コストの増加、「環境」の優先順位の低さは、ゼロエネルギー建築の普及における住宅・建築に共通する課題です。ダイアログでは、それを乗り越えていくアプローチは一つではなく、住宅・建築・街づくり、それぞれの方向性が得られた気がします。不断の技術開発やコストダウンの取り組みは共通ですが、住宅ではお客さまを中心に考え、健康や安全・安心といった顧客価値に結び付ける「付加価値の追求」、建築では利回りが重視される市場構造を逆手に取り、環境に配慮した建物が高い評価を受ける「不動産マーケットの変革」、街づくりでは地域に根差した「自然の活用」と「周辺の既存街区との連携」などです。
今後も、「エネルギー“ゼロ”の住宅・建築・街づくり」を一つの軸に、時に“急がば回れ”の取り組みも含め、スピード感を持って普及に全力を尽くしてまいります。

環境部 部長 小山 勝弘


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