Special Interview スペシャルインタビュー サステナブルな人 国連広報センター所長 根本かおるさん × フォーブス ジャパン本誌副編集長 谷本有香さん

人

サステナブルな人 スペシャルインタビュー

根本かおるさん × 谷本有香さん【後編】サステナブルな未来に向けて"FUN"から始まるSDGs
~誰も置き去りにしない社会を実現するために私たちができること~

2017.08.10

根本かおる さん

国連広報センター所長

米国ニューヨークのコロンビア大学で国際関係論修士号、東京大学で法学士号を取得。元テレビ朝日アナウンサー。ジャーナリスト。アンカラ(トルコ)の副保護官、ムインガ(ブルンジ)の保護官、ジラニ(コソボ)の保護官、ジュネーブ本部国際保護局の上級保護官、UNHCRネパール・ダマク事務所長、ジュネーブ本部の渉外部門で民間資金調達副部長を歴任。2004年2月から2006年1月にかけ世界食糧計画(WFP)日本事務所広報官も兼務。2007年6月から2009年10月にかけ国連UNHCR協会事務局長。

谷本有香 さん

フォーブス ジャパン副編集長

証券会社、Bloomberg TVで金融経済アンカーを務めた後、2004年に米国でMBAを取得。その後、日経CNBCキャスター、同社初の女性コメンテーターとして従事し、2011年以降はフリーのジャーナリストに。これまでに、トニー・ブレア(元英首相)、ハワード・シュルツ(スターバックス会長兼CEO)、スティーブ・ウォズニアック(アップル共同創業者)、ジム・ロジャーズ(個人投資家)、ポール・クルーグマン(ノーベル経済学者)をはじめ、1,000人を超える世界のVIPにインタビューした実績をもつ。

真のサステナブルな社会の実現のために"誰も置き去りにしない"

根本 : サステナビリティとは、「持続可能性」のことを言い、将来世代の可能性を制限することなく、いまの世代が発展することを表します。だから過去から現在、未来へと続く時間軸を意識して行動しなくてはいけない。

これを前後の軸とすると、さらにもうひとつ、地理的な左右の視点を加えて、同時代を生きる他国のことも考えなくてはならない。つまり全方位的な考え方を持って、これからの社会はサステナブルな方向へ進んでいかなくてはいけないのだと思います。

それはもちろん私が専門としてきた難民の問題にも関係することです。2016年末の数字として6,560万人もの難民・国内避難民が紛争や深刻な人権侵害などから故郷を逃れて避難生活を送っています。これは第2次世界大戦以降、最多の数なんです。これこそサステナビリティが欠如した社会のひとつの形だと思うんですね。もちろんただそれだけではなく、そうした象徴だと思うんです。

人の強制移動を生む原因は複合的です。紛争であり、気候変動による干ばつ、それによる食糧不足。家畜を放牧する緑がないからと移動すると、そこで紛争が始まってしまったり。住んでいた国をさまざまな事情で去らざるを得なくなる人の絶望を想像してみてください。やはりこうした社会の歪みというものは、一番の弱者にしわ寄せが行ってしまうんです。

だからこそ、目標は"誰も置き去りにしない社会"をつくること。そこを出発点にしない限り真の意味でのサステナブルな社会は実現しないと思うんです。

難民支援というと上から何かを与えているイメージがあると思いますが、私個人の場合は、そうした支援活動を通じて、困難に直面しながらそれを乗り越えようとする人々の姿からたくさんのことを学ばせてもらっています。極限状況を生き抜いてきた人の生命力には目を見張るものがあります。

悲惨な体験を受けてなお、ポジティブに行動できる人たち。彼らの生き様に、時に励まされ、時に胸を打たれながら、彼らからもたくさんのものを与えられてきた、その感覚が私の中にはしっかりとあるのです。

谷本 : 机上の知識だけでなく、現地で体験してきた肌感覚ということですね。

女性に対する暴力や窃盗などの文民保護区の治安面での課題について説明を聞く根本かおる国連広報センター所長(中央)。

写真提供:UNMISS Patrick Orchard

根本 : 経済学の世界には富める者が富めば、貧者の元にも自然に富がこぼれ落ちていくという考えがあります。理論上は可能なようですが、現実はそうではないということがわかってきました。今年の世界経済フォーラムの直前に、国際NGOオックスファムから『世界の最も裕福な8人の富と世界人口の下半分にあたる36億人の富とがイコールだ』と、格差が広がっているとの発表がありました。

つまり、ややもすると置き去りにされがちな立場にある人々を最初から手当していかないと、底上げができないということです。

国を超えて手と手を取り合うことで統合的に問題解決をすることができる

谷本 : そうした途上国に対して何ができるんでしょう?

根本 : サステナブルな視点で、開発も考えることですね。例えばアフリカの農業開発を困難にしているのは、地球温暖化による気候変動です。かつて世界6位の湖面面積を誇ったチャド湖(チャド、ニジェール、ナイジェリア、カメルーンの4カ国にまたがる)は、約50年前と比べて、その95%が枯渇し消失しかけている。

あるいは、世界で4番目に大きかったアラル海(カザフスタン、ウズベキスタンの2カ国にまたがる)は、大量の水を必要とする綿花栽培のために行われた大規模灌漑が原因で、枯渇しようとしている。これらの現実は皆、未来を考えない開発が原因でしょう。

谷本 : いま出てきた話題だけでも、貧困、経済格差、気候変動など、さまざまな問題を感じました。これらに対して国連はどうアプローチしているのでしょう。

根本 : ことは単純ではありません。国連としては、貧困、気候変動などのあらゆる問題を統合的な視点でつなげて考えていくアプローチをとる必要がありますね。国や地域によって深刻な問題は異なります。

しかし、統合的に考えれば、様々なものが見えてきます。A国の技術がB国の課題を解決するなど、できることがある。目先の課題だけを見てるとわからないことでも、大きな視点で見ることによって解決することがあるんです。

国連は、諸問題を解決するために、国をまたいでのつながりを提供できる組織。例えば、水が枯渇して困っているアフリカの農業地帯に、ネットワークや現地の知見を持つ国連機関も協力する形で、日本企業の少ない水で農業を可能にするシステムを提供する。また、国連海洋会議では、世界の水産加工業全体で持続可能な漁業に取り組んでいくことを目指す共同議長国・スウェーデンと、漁業大国である日本の水産会社とのパイプ役となりました。

アフリカでは農業開発が、スウェーデンでは海洋資源が、自国の経済に直結する深刻な問題です。それだけに、「つくる責任・使う責任」に真剣に向き合っています。各々が特に注力して取り組んでいることを共有し、目先の事象だけではなく地球全体の将来を見据えて行動することが重要なのです。

谷本 : 「三方善し」の精神で、同じゴールを目指す。近年では現地の雇用創出だけでなく、技術の応用、さらには事業としてその地域で成立するまでをアテンドする包括的な社会貢献が進んだりしているケースが増えていますが、日本企業に期待される役割は、ますます大きくなっていきますね。

根本 : はい。大いに活躍する場があるはずです。ぜひ積極的にそうした役割を担ってほしいですね。加えて、発信力のあるB to C(対消費者)の会社には、SDGs経営宣言をしてもらえれば。消費者に伝える立場の企業が宣言することは非常に大きなインパクトを社会に与えるはずです。

成功例でいうと、吉本興業・大﨑社長に私が直訴して、個人に対してのSDGsの認知度を高めるために協力していただきました。「平和かつ持続可能な社会があって初めて、お笑いやエンターテイメント産業というものは成り立つんだから、ぜひ、協力させてください」という言葉もいただいて。3月8日の「国際女性デー」には椿鬼奴さん、ゆりやんレトリィバァさん、宮川花子さんなどの女性芸人の方々に女性に対するメッセージをいただいて、SNSで拡散してもらうという試みも実現しました。

企業はもちろん、各個人、教育機関、あらゆる立場から発信し、協働していくことが大切なのです。もちろん国連でもあらゆるステークホルダーから話を聞き、連携する場づくりを行っています。

「SDGs × 島ぜんぶでおーきな祭」 ©2009-2017 沖縄国際映画祭/よしもとラブ&ピース

「島ぜんぶでおーきな祭・第9回沖縄国際映画祭」で西川きよし師匠ら吉本芸人と一緒にSDGsをアピール。

世界的写真家・レスリー・キーさんもSDGsのコンセプトに共感。ミュージック・ビデオ「恋のブギウギトレイン」を制作し、音楽と映像を通じたSDGs啓発活動に協力してくれました。

持続可能な開発目標(SDGs :Sustainable Development Goals)とは

貧困、不平等・格差、気候変動のない持続可能な世界の実現に向けた、国際社会共通の目標。2015年9月25日、ニューヨークで開催された国連総会「持続可能な開発に関するサミット」において採択され、2030年までに達成すべき17の目標を掲げている。

SUSTAINABLE DEVELOPMENT GOALS 世界を変えるための17の目標

※2018年1月1日付で、ゴール10のアイコンが変わりました

グローバル・ゴールズ:持続可能な開発目標

WE THE PEOPLE - グローバル・ゴールズ:「持続可能な開発目標」

映像提供:国連広報センター

SDGsは、「貧しい人々が取り残され、地球環境は悪化している。このままでは世界が立ち行かない」という強い危機感のもとつくられた。経済発展だけを目指すのではなく、社会、環境、経済の3つの側面の全てにバランスが取れた形で対応し、さまざまな問題を生み出す根本的な原因に取り組み、いまの世界の「変革」を目指すものになっている。

インタビューの先頭へ戻る

RECOMMEND おすすめコンテンツRECOMMEND おすすめコンテンツ

このページの先頭へ