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Special Interview スペシャルインタビュー サステナブルな人 ハーブ研究家 ベニシア・スタンリー・スミスさん

写真:梶山 正

人

サステナブルな人 スペシャルインタビュー

ベニシア・スタンリー・スミスさん【後編】ベニシアさんの手作り暮らし キンセンカのスキンクリーム
~自分のファミリーを守ること、それがサステナブルな社会へつながる~

前編:ベニシア・スタンリー・スミスさん【前編】京都・大原の古民家で自然と寄り添いながら暮らす

2017.09.28

ベニシア・スタンリー・スミス さん

ハーブ研究家

1950年にイギリスの貴族の館で知られるケドルストン・ホールに生まれる。19歳のときに貴族社会に疑問を持ち、イギリスを離れてインドを旅する。71年に来日。78年から京都で英会話学校を始め、現在の「ベニシア・インターナショナル」を設立。96年、大原の古民家へ移住してハーブガーデンをつくり始める。ハーブやガーデニングに関する記事を雑誌や新聞に執筆。著書多数。NHKの番組『猫のしっぽ、カエルの手』に出演中。

オーガニック・ファーミングを志す

―― ハーブガーデンづくりを通して見えてくる生き方とはどのようなものなのでしょうか。

大原の古民家に移り住むようになってからハーブガーデンをつくり始めました。ローズマリー、レモンバーム、バジル、チャイブ、ミント、ラベンダーなどなど。私はさまざまなハーブを育て、そのハーブの恵みを飲んだり食べたり、クリームやオイルに入れてスキンケアに使ったりして活用しています。

他にも、ガーデニングに使うコンポスト(堆肥)も手づくりしています。コンポストは肥料という目的だけではなく、冬の間は温かい毛布の役割も果たしてくれ、植物の根を寒さから守ってくれます。コンフリーというハーブの葉を2カ月間ほど水に浸して発酵させた黒い液体を、必要なときに水で薄めて植物の根元にかけてあげると元気に育ちます。

「ピースガーデン」と名付けた庭には、ユズやビワといった日本のハーブがいろいろ。「昔からある木はそのまま。奥にはお地蔵さんもいるのよ」とベニシアさん。彼女が座っている台も、骨董品屋や雑貨屋で少しずつ集めたタイルを自分で貼って、お気に入りの雰囲気をつくり上げたそうです。

こうしてハーブに親しんでいくなかで、地球環境のことを考えるようになりました。ハーブはもちろん、口にするすべての食べ物や肌につけるものを育ててくれる水や土、空気、さらには地球環境が私たちの体にもたらす影響を考えるようになったのです。その問題に対する意識が高まってきたこともあって、私はオーガニック・ファーミング(有機栽培)を始めたのです。

ハーブという一つの興味から、オーガニック・ファーミングやガーデニング、そしてオーガニック製品にも興味が湧き、それがどんどん膨らんで人生が豊かになっていく。これは、生活にハーブを取り入れるようになって実感したことです。

自然現象は、人間の思い通りにはなりません。丹精込めてつくったハーブが、ある朝起きたら、台風で台無しになってしまうこともあります。でも、そんなときは植え替えのチャンスだと思って、気を取り直すことにしています。ガーデニングには、自然、地球、そして宇宙にまで広がる深い世界があると思っています。

土地には、その土地に合った植物があり、暮らしがある

―― 大原に移り住んで20年。当初と今とで変わってきたことはありますか。

毎朝、夫(写真家の梶山正さん)がいれてくれたおいしい日本茶を飲み、庭に出ます。庭ではさまざまなハーブや植物が育ち、元気を与えてくれます。嫌なことがあっても、庭仕事をしているうちに忘れてしまうことも。それは、20年前と変わらない日常です。

でも、最近、少し感じることがあります。それは、それぞれの土地には、ぞれぞれの土地に合った植物があり、暮らしがあるということです。

年齢を重ねてくると、だんだん広いハーブガーデンの手入れすることが難しくなってきます。すると見えてくるのは、西洋のハーブに比べ、日本のハーブのほうが何倍も手入れがしやすいということです。

乾燥した空気の中で育つことが多い西洋のハーブは、日本の湿気には弱く、雨が多くなると元気がなくなります。でも、日本のハーブは雨にも湿気にも強く、元気に育ってくれます。日本では、日本のハーブのほうが効き目も強いような気がします。

ある日、イブキタイムという珍しい名前のタイムをハーブショップで見つけました。見かけと香りは、地中海産のタイムとそっくりです。調べてみたところイブキジャコウソウ(伊吹麝香草)という日本原産の山野草で、咳止め作用のある薬草でした。野生のイブキジャコウソウを見たくて、夫と息子と3人で伊吹山に出かけました。

この山頂一帯は、「伊吹山頂草原植物群落」という国指定の天然記念物に指定されています。記録によれば、450年ほど前に織田信長がポルトガルの宣教師に命じてヨーロッパから約3000種の薬草を取り寄せて、ここに薬草園をつくったそうです。

現在この山には、約280種の薬草が自生していますが、それらはすべて日本の原産種とのこと。ヨーロッパ産の薬草は残っていないそうです。

磨き込まれ、黒光りする床や柱が美しい室内。キッチンは使い勝手を考えて改装したそう。天窓の明かりがキッチン全体に広がるように、上部の壁を撤去。流しの窓からは裏庭が見えて食器洗いも楽しくなったそうです。

今は世界中のものが簡単に手に入る時代ですが、本当に必要なものはすぐ近くで見つかるものなのかもしれません。ドクダミ、ゲンノショウコ、ヨモギ……。日本で育つハーブにも、もっと目を向けたいものですね。

昔は自分でいれた紅茶を飲むのが、毎朝の習慣でした。でも、今は夫がいれてくれる日本茶のほうが体に心地よいと感じることが多くなったように思います。

ベニシアさんの手作り暮らし

代表的な
日本のハーブ
楽しみ方 育て方 ※
ドクダミ 乾燥させた葉は、お茶(ドクダミ茶)として楽しんだり、ハーブバスとして使用します。 耐寒性の多年草。日本各地に自生し、繁殖力が強く、5〜6月に白い優美な花を咲かせます。花が咲いたら、晴れた日に葉を収穫します。
ゲンノショウコ 茎や葉を陰干ししたものを煎じてお茶として楽しむほか、ヨモギと合わせて入浴剤としても使用できます。 耐寒性の多年草。繁殖力が旺盛なので、植え付ける場所に注意し、過剰な繁殖に気をつけましょう。
ヨモギ 春の柔らかい若葉は、ケーキやミルクセーキ、ヨモギ餅の材料に。夏には、伸びた茎ごと収穫し、乾燥させてハーブバスとして使用します。

※ 日本古来のハーブは、道端やあぜ道、河原などに自生していることが多い。

サステナブルな社会へ、自分にできることから少しずつ

―― ベニシアさんがお考えになるサステナブルな社会とはどのようなものなのでしょうか

サステナブルな社会と聞くと、とても壮大で奥深く、自分たちだけではとうてい手が届かないもののように感じるかもしれません。でも、本当にそうでしょうか。難しいことは考えずに、まずは自分のファミリーの健康と笑顔を守ることから始めるのが、サステナブルな社会への第一歩だと思っています。

例えば、安全なものが食べたいから、無農薬や有機栽培の野菜、無添加の食品などを選ぶようにしています。調味料などを入れる容器も、プラスチックではなく人にも地球にも優しいガラスや陶器などを使い捨てず、繰り返し使っています。自分ができると判断したことは、すぐに行動に移すことにしています。

地球環境という大きな問題を前にしたら、こうした行動は針の穴ほどの影響力もないかもしれません。でも、家族の健康や安全を考えて私のように行動を起こす人が増えれば、大きな力を生むかもしれないのです。

今から40年以上も前、インドで生活をしていたときに、瞑想の先生がこんなことを言いました。「人間が木に登り、枝の上に座っている。その人は自分が座っている枝を切り落とそうとしている」。そのときは、その言葉の意味を理解することができませんでした。でも最近になって、その話の意味をよく考えます。木は、私たちが住む地球なのだと……。

一人ひとりが自分でできること、身近なことから少しずつ始めてみる。それが大切なのだと思います。

ベニシアさんの手作り暮らし

ベニシアさんは手作りしたスキンクリームを陶器のボトルに入れて使っています。

ハーブでスキンクリームやせっけんを作っているベニシアさん。キンセンカのスキンクリームの作り方を教えていただきました。「キンセンカは、おむつかぶれ用のベビークリームや肌のトラブルを和らげるクリームとして使われるハーブです」

※すべての方に効果的というわけではありません。使用に関してはご本人の判断でお願いします。

キンセンカのスキンクリーム

材料:
  • キンセンカの花びら(ドライ) … 25g
  • 水 … 500cc
  • グリセリン … 45ml
  • 顔用のベースクリーム … 100g
    ※無香料の全身に使えるクリーム等
  • キンセンカのエッセンシャルオイル … 4滴
作り方:
  • 1.花びらを弱火で30分煮て、漉す。
  • 2.煎じた液を冷まし、グリセリンをよく混ぜる。
  • 3.ベースクリームに 2 を小さじ4とエッセンシャルオイルを4滴加えて混ぜ、瓶に入れて保存する。

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