TOPICS ZEBを新たな技術で実現。電力自給オフィスで人にも環境にも優しく

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ZEBを新たな技術で実現。電力自給オフィスで人にも環境にも優しく
~大和ハウス佐賀ビルの挑戦~

2019.03.28

地球温暖化が加速する今、日本のエネルギー消費量の3割以上を占める、オフィスや住宅での省エネの強化が求められています。そんななか注目されているのが、「ZEB(ゼブ)」(※1)という考え方。建物を運用するために必要なエネルギー消費量を、省エネや再生可能エネルギーの利用を通して削減し、限りなくゼロに近づけようとする取り組みです。

大和ハウス工業は、2018年2月26日より、佐賀県佐賀市の「大和ハウス佐賀ビル」において、商用電力から自立して運用可能な、日本初(当社調べ)の再生可能エネルギーによる電力自給オフィスの実現に挑戦しています。

※1.ゼブ:ネット・ゼロ・エネルギー・ビル。再生可能エネルギー発電量とエネルギー消費量が収支ゼロのビルを指します。

環境負荷“ゼロ”を目指して環境配慮建築を推進する大和ハウスグループの中心的メンバーの一人で、佐賀ビルの企画・開発・設計の責任を担った谷口和紀(大和ハウス工業株式会社、建築事業推進部・企画開発設計部、環境・設備グループ)に、佐賀ビルに導入された再生可能エネルギーによる自立運用を可能にするための技術をはじめ、実証実験の経過などについて話を聞きました。

1、暑さ寒さが厳しい佐賀で実証実験スタート

佐賀ビルの建設地は佐賀県佐賀市、JR佐賀駅から徒歩で20分ほどのところに位置します。ビルの老朽化を機に建替え、ZEB化しました。1階がショールーム、2階が事務所の鉄骨造2階建て。延べ床面積約2400m2の小規模ビルです。

日本初(当社調べ)の電力自給オフィスの実証実験の場に佐賀の地が選ばれたのは、晴天率が高く日射が豊富に得られるからですが、理由は他にも。佐賀市は夏の平均気温が常に全国上位にランクインされるほどの猛暑で知られますが、一転して、冬は日本海から吹きつける冷たい風にさらされます。このような寒暖差が大きい佐賀の気候条件下で電力自給オフィスを実現することができれば、その成果を日本各地へ水平展開していくハードルは低くなります。また、佐賀市は地下水(井水)の利用も可能なため、太陽光、太陽熱以外を熱源とした自然エネルギー電源の活用にも適していました。

2、電力の自給を可能にした3つのポイント

ポイント(1):太陽光発電と蓄電池を連携した電力自立システム

佐賀ビルでは、太陽光発電システムから電源版までを直流で形成し、商用電力を直流に変換し受電する仕組みを作ったことで、商用電力から自立したユニークなシステムとなっています。太陽光発電とリチウムイオン蓄電池は連携していて太陽光発電(83.2kW)からオフィスの照明や電気機器に電気を供給し、余剰電力は蓄電池(105 kWh)に蓄えます。太陽光発電が消費電力以下になると、蓄電池に貯めた余剰電力を自動で供給し、さらに電力が不足すると商用電力を活用するようになっています。

通常時(晴天時の昼間) 大容量蓄電池に太陽光発電の余剰電力を蓄電 太陽光発電で不足する場合は蓄電池および商用電力を使用

※2.パワコン: 太陽光パネルで発電された直流の電気を、交流の電気に変換する機器。「パワコン」の通称で呼ばれる。

通常時(雨天・夜間) 大容量蓄電池に貯めた電気を事務所内に供給 蓄電池の電力が不足する場合は商用電力を使用

ポイント(2):井水と太陽熱を利用したハイブリッド空調システム

住宅やビルなどの消費電力の中で最も大きいのが、空調エネルギーです。佐賀ビルでは、これを低減するために、年間を通じて約15℃の井水と太陽熱で作った温水を熱源とした「ハイブリッド空調システム」を導入しています。太陽熱で作った温水は暖房だけでなく、外調機の除湿剤再生等にも活用しています。この他、自然換気システムも取り入れることにより、当ビルの空調に要する電力消費量は同規模の一般建築(※3)と比較して約7割も削減、ピークカットにも成功しています。

※3.国土交通省が公布した「建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律」で定める基準建物。

冷房時 太陽熱温水パネルの採熱とでデシカント空調機の除湿ロータを乾燥させ、再利用させます。(ただし、天候不良/夜間時は停止) デシカント空調機で給気を
除湿します。

※4.デシカント空調機:温度と湿度を分離制御する空調システム
※5.空調用チラー:ヒートポンプ式熱源機

暖房時 太陽熱集熱器により採熱した熱でデシカント空調機の給気を予暖します。(ただし、天候不良/夜間時は停止) 空調用チラーにより設定温度まで
給気を加熱します。

ポイント(3):電力変換に伴う電力損失を約8%軽減

通常、太陽光発電から出力される直流電流はいったん交流に変換し、再度直流に変換して蓄電池に溜められ、使用時は再び交流に変換するという送電上の利点を考えられた方法がとられています。しかし佐賀ビルでは、太陽光発電と蓄電池、電源盤を独自の電力システムによって直流のままつないでいるため、電力変換に伴う電力損失を約8%軽減する仕組みとなっています。

自然エネルギー電源を優先し、商用電源もそれに合わせて直流にしてビル内に流すという方式は、これまでに類を見ない試み。技術的な難しさもあり、「これを実現しようといった、発想自体がなかったのでは」と谷口。これまでの常識をひっくり返す電力システムを実現するカギとなりました。

3、自然災害にも強い防災型オフィスとしても機能(BCP対策)

商用電力を直流電流に変換してビル内に流す電力システムとした最大の理由は、「BCP対応」(※6)にありました。2018年の北海道胆振東部地震発生後の大停電は記憶に新しいところですが、佐賀ビルのプロジェクトが始動した2016年、熊本地震が発生し、停電が復旧活動の足かせとなる状況を身近で体験することになりました。

※6. Business Continuity Planの略。企業が自然災害による事故や停電などの緊急事態に備えるための対策。

意外に知られていないことですが、停電すると一般的なパワコンは機能しなくなり、太陽光発電があってもその電力は使えず、パワコンを手動で停電モードにすることで初めて、あらかじめ決めた電力系統にのみ電力供給が出来るようになります。佐賀ビル独自の電力システムは、商用電力から自立して動いているため普段通り機能し、太陽光発電からの電力供給が途絶えることはありません。災害時に停電しないビルの構築は、避難所をはじめ、銀行、病院、冷凍倉庫など市民生活を支える施設には不可欠であり、将来のビルのあり方を考えた、佐賀ビル設計における重要なコンセプトの一つでもありました。「BPC対応」の検証は現在も続いています。

停電時 停電時でも切り替え操作なしで電力供給が可能
  • ・太陽光発電から供給。余剰電力は蓄電池に充電します(ただし、満充電状態以外の場合に限る)。
  • ・太陽光発電では足りない場合は、蓄電池から電力が供給されます(ただし、蓄電残量がある場合に限る)。

4、実証実験の結果は、空調の消費電力が大幅減!

一般的なオフィスビルでは、消費電力、ピーク電力ともに最も大きいのが空調エネルギーです。2018年12月末現在までの実証実験データによれば、空調エネルギーの消費電力は、特に夏期では大きく削減でき、記録的な猛暑だった8月でも一般的なビルの72%減という結果が出ています。

外気温が40度を超える日々が続いた夏を、通常の5分の1から6分の1の消費電力で抑えられたのは、外気温に左右されず安定的に冷熱を取り入れることが出来る井水熱を熱源に出来たことはもちろん、デシカント空調機による除湿・加湿の湿度調整を取り入れ、体感による快適性を向上させたことが大きかったようです。室内に風を取り入れるシステムと併せ、多くの社員が、「以前よりずっと快適に感じる」と報告しています。

5、エネルギーを地産地消する佐賀ビルをモデルに全国展開

我が国の建築物省エネ法に定められたZEBの算定方法では、水や太陽熱を熱源とした空調の算定はできません。そのため、計算上は、佐賀ビルは、「ZEB」の手前の「Nearly ZEB」ということになりますが、ネット・ゼロ・エネルギー・ビルに限りなく近いビルとなっています。佐賀ビルの先導的な省エネルギー性能は、BELS(※7)評価で、自社施設としては初めて最高ランクである5つ星を取得しました。

また、当ビルは、その「チャレンジングな取り組み姿勢と技術開発を評価」され、「第1回エコプロアワード」(※8)において国土交通大臣賞を受賞しました。

大和ハウス佐賀ビルを説明する谷口和紀

※7.建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律の「建築物のエネルギー消費性能の表示に関する指針」に定められた、第三者の建築物省エネルギー性能表示制度。省エネルギー基準に対する指数に応じた☆数が表示される。

※8.環境負荷の低減に配慮した優れた製品・サービスを表彰する賞。「旧:エコプロダクツ大賞」の評価範囲をプロダクツ以外まで拡げ、2018年に新設された。

EcoPro Awards

電力面では、佐賀ビルは、83.2kWの太陽光発電を搭載し運用しています。実は、この83.2kWという数字は、直流・交流の電力変換に伴う電力損失量を差し引いて換算されています。佐賀ビルに起用した独自の電力変換システムによって電力損失量は予想以上に抑えられ、実際には、100kW近い能力があることがわかりました。そのため、余剰電力が当初の想定を大きく上回る嬉しい誤算があった一方、想定より多い待機電力があることが判明するなどがあり、蓄電池を75 kWhから105 kWhに増設しました。このように検証データを基に現在でも改良を進めていて、より効率の良い電力自立ビルへの挑戦を続けています。

また、佐賀ビルでは、空調エネルギーの熱源として地下水(井水)と太陽熱を活用しました。このシステムは、地域によって異なる有利な熱源、例えば沢や湖などの水源や、温泉、地熱のほか、工場の機械が排出する排熱等もを熱源とすることもできます。地域に合った様々なエネルギーを地産地消すれば、佐賀ビルの成果を日本各地に水平展開していくことは難しいことではありません。今後は、機器の小型化と低価格化等、普及のための課題にも取り組んでいきたいと考えています。これらの課題を少しずつクリアすることで、海外市場はもちろん、特に電力供給が不安定な途上国での展開も視野に入ってきます。

ZEBについて

大和ハウスグループのZEB

大和ハウスグループは「ZEB(ゼブ:ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)」のトップランナーとして環境負荷”ゼロ”の社会を目指します。

ZEBについて

「ZEB(ゼブ:ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)」とは?

ZEBとは、Net Zero Energy Building(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)の略称で、「ゼブ」と呼ばれています。快適な室内環境を保ちながら、省エネと創エネにより、「建物で消費する年間の一次エネルギーの収支をゼロにすることを目指した建物」を指します。

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