TOPICS サプライチェーンの協働力で気候変動・森林破壊を食い止める © WWF Indonesia

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サプライチェーンの協働力で気候変動・森林破壊を
食い止める
〜環境負荷ゼロのために企業がすべきこと〜

2020.09.30

生活の利便性が向上するとともに、気候変動をはじめとする様々な環境問題の深刻さが増しています。世界気象機関(WMO)が2019年に発表した報告書では、2015年から2019年までの5年間、世界の平均気温が観測史上最も暑く、CO2濃度の上昇率はこれまでと比べて20%高いことが明らかになりました。このまま進行すると、すでに起きている農業への打撃、飢餓や病気の拡大、熱波・洪水・干ばつ・森林火災などがより頻繁に起き続けることが懸念され、地球の生物多様性も危機にさらされる事になります。この流れを変えていかなければ、地球の自然環境と生物多様性は失われ続けることになるでしょう。

この課題において企業が取るべき姿勢の一つは、サプライチェーン全体で考えること。今回はサプライチェーンをテーマにご紹介します。

サプライヤー企業と繋がる大和ハウス工業独自の調達ガイドライン

大和ハウス工業では、2016年度に環境長期ビジョン“Challenge ZERO 2055”を策定しました。創業100周年にあたる2055年を見据え、4つの環境重点テーマ(気候変動の緩和と適応、自然環境との調和、資源保護・水資源保護、化学物質による汚染の防止)に関して、環境負荷ゼロを目指した取り組みを進めています。

CDPとは

2000年に発足したロンドンに本部を置く国際的な非営利団体であり、世界の主要企業の環境活動に関する情報を収集・分析・評価し、その結果を機関投資家に提供しています。CDPの情報開示プログラムは「気候変動」「ウォーターセキュリティ」「フォレスト」の3分野に分かれており、それぞれリーダーシップレベルの取り組みを実践している企業を「Aリスト企業」に認定している。

大和ハウス工業のCDPスコアのあゆみ

2014年
「CDP ジャパン 500 気候変動レポート 2014」において、気候変動パフォーマンス先進企業「クライメート・パフォーマンス・リーダーシップ・インデックス2014(以下、CPLI)」に選出
2019年
「CDP気候変動2018」において、最高評価の「気候変動Aリスト企業」
「CDPウォーター2018」では「A-」、森林資源の保全に関する調査「CDPフォレスト2018」では「B」を取得
2020年
「CDP気候変動2019」において、最高評価の「気候変動Aリスト企業」
CDP「サプライヤー・エンゲージメント評価」で最高評価に認定

お話を聞いた方

杉浦雄一

大和ハウス工業株式会社
執行役員
購買部長、購買推進部長、購買部門担当

―― 気候変動が社会・経済に及ぼす影響について、どのようにお考えでしょうか。

異常気象による大規模災害が年々増していることに危機感を抱いています。
この20年間に、洪水や大雨で20億人を超える方が被災されたそうです。気候変動が進行すれば、世界で約1460万件の物件が浸水リスクにさらされると言われています。この状態が続けば、住宅や建物の建設に対して人々が後ろ向きなマインドになり、住宅産業そのものが成り立たなくなることも危惧しています。

また今年は新型コロナウイルス感染症が流行し、世界中で経済活動が制限されたことにより空気が綺麗になったと話題になりました。曇りのない地球の衛星写真を見たとき、いかに私たちの経済活動が地球環境に負荷を与えていたのかと、現実を突き付けられました。さらに、海外のサプライヤー企業とのやりとりが滞り、事業に不可欠な調達が脅かされました。そんな中で気候変動による影響は今後、私たちが予想し得ないところにまで及ぶのではないかと考えると、サプライチェーン全体で脱炭素化に取り組む重要性を感じます。

―― 大和ハウス工業の現状と課題について教えてください。

建物が一生涯で排出するCO2の内訳を見ると、最も多くの割合を占めるのがお客様の居住段階であり、全体の6割を占めます。次いで多いのが資材の調達段階で約2割です。一方、自社の工場や事務所、施工現場で排出するCO2はわずか1%程度に過ぎず、私たち一社だけで省エネルギーや再生可能エネルギーの取り組みに力を入れてもほとんど効果がありません。

お客様には環境負荷の少ない製品・サービスを提案し、開発から販売に至るサプライチェーン全体が連携することで、つくる時も住まう時も環境を配慮した住宅を開発することが我々の使命だと考えています。

―― サプライチェーンにおける環境負荷低減においてどのような取り組みをしていますか。

資材調達において「CSR調達ガイドライン」を制定し、運用拡大に努めています。

CSR調達ガイドライン

7つの視点から定められた「取引先行動規範」、社会性・環境性における20の具体的実施事項を明記した「企業活動ガイドライン」、建材等の化学物質・木材等の生物多様性の管理方針を示した「物品ガイドライン」の3つのカテゴリーから構築されている。
出典:CSR調達ガイドライン

関連部門の担当者で構成されたCSR調達部会が中心となり、CSR調達ガイドラインの趣旨をサプライヤー企業にご理解いただき、PDCAサイクルを回しながらガイドラインに基づく調達を推進しています。

また、気候変動については主要サプライヤー企業204社に対して温室効果ガス排出量の削減目標を設定するよう求めています。2019年度末時点ですでに71%の企業が削減目標を設定しており、2021年度までにこれを90%へ高めます。さらに、2025年度までに削減目標をパリ協定(1.5℃または2℃目標)と整合する水準まで引き上げていただくことを目指しています。これらの実現に向け、当社とサプライヤー企業が共に環境問題の重要性を共有し、脱炭素化の取り組みを推進することを目的に2019年度に「脱炭素ワーキンググループ」を立ち上げ、研修会や講演会などを実施しています。これまで180社300名以上に参画いただきました。

他にも、大和ハウスグループの発注先・卸先で取り扱われる木材の合法性や持続可能性を把握する木材調達調査を実施するなど、QCD(品質・コスト・納期)ばかりではなく社会性・環境性の高い事業運営の転換へ新たなスタートを切っています。

―― サプライチェーンでの目標達成において、大和ハウス工業が描く社会はどのような姿でしょうか。

誰ひとり取り残さない社会です。
SDGsで掲げられ、世界全体で目指しているゴールは私たちの目指すサプライチェーンの在り方と重なります。大和ハウス工業のサプライチェーンに関わる全てのサプライヤー企業と、目標を共有しながら、一社も取り残されることなく共に発展すること。新規サプライヤー企業についても、方針をご理解いただいた上で協力体制をとる。そんな姿が大和ハウス工業の実現したいサステナブルな社会です。

デザイン性だけじゃない、トッパンの環境に優しいおうちインテリア

大和ハウス工業のサプライチェーンの一社であり、情報コミュニケーション、生活・産業、エレクトロニクスなど印刷テクノロジーをベースに様々な事業を展開するトッパングループでは、CO2の排出削減においてSBTの認定を取得しています。

※ SBT:Science Based Targets(科学的根拠に基づいた排出削減目標)。科学的な知見と整合する、企業の温室効果ガス削減目標。

お話を伺った方

内藤清 さん

凸版印刷株式会社
製造統括本部 エコロジーセンター 環境政策部

吉田浩一 さん

凸版印刷株式会社
製造統括本部 購買センター 資材調達部

―― 温室効果ガス削減にどのように取り組まれていますか。

内装インテリアやドアなど木目調の造作材に使われる化粧シートの素材を、ポリ塩化ビニルからオレフィン系のエコシートへ、切り替えを進めています。切り替えによりCO2排出量を約38%削減できるので、大和ハウス工業さんにもご協力いただき販売数を増やしています。

エコシートは壁、ドア、床など室内の多く場所で使用されています。
また弊社の場合は製造工場におけるCO2排出量が大半を占めるため、SBT認定目標に則った省エネの目標設定と管理を各工場単位で実施しています。

―― サプライチェーンに関して注力していることはありますか。

弊社は、スコープ3(事業者の活動に関連する他社の排出)のカテゴリー1(原材料調達)におけるCO2排出量が全体の6割を占めています。そこで「トッパングループCSR調達ガイドライン」の中で、取引先への遵守を要請する基準を示しています。調達部門が、取引先に対して「調達基本方針」に沿った適切な対応を取っているかのモニタリングを年一回、偏りを発生させない様 、調達先を「用紙、板紙」「材料」「設備・フィルム」の3カテゴリーに分け、3年周期で実施しています。また大和ハウス工業のサプライヤー会員として勉強会に参加し、自社のCO2削減の事例を紹介するなど積極的に連携をとっています。

自社で排出するサプライチェーン排出量(スコープ1、スコープ2)についても、2030年までに2017年比で30%削減する目標(SBT認定済)を掲げています。またスコープ3についても世の中の変化に合わせ、試行錯誤しながら脱炭素型の製品開発を進めていきたいと思います。

サプライチェーン上で排出される温室効果ガス「サプライチェーン排出量」は、環境省による算定基準に則り、3つのスコープ(Scope)から構成されています。
Scope1:事業者自らによる温室効果ガスの直接排出(燃料の燃焼、工業プロセス)
Scope2 : 他社から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴う間接排出
Scope3 : Scope1、Scope2以外の間接排出(事業者の活動に関連する他社の排出)
サプライチェーン排出量のスコープ図

出典:環境省ホームページ

快適な暮らしを支えるLIXILのCO2削減

トイレ、浴室、キッチンなどの水まわり、窓、玄関ドア、インテリア、エクステリアなどの建材といった人々の暮らしを支える製品やサービスを開発・提供するLIXILは、事業プロセスにおける低炭素・脱炭素社会の実現と温室効果ガスの排出削減を推進しています。

お話を伺った方

川上敏弘 さん

株式会社LIXIL
環境推進部 部長

―― 環境課題を意識したLIXILの製品を教えていただけますか。

具体的にいくつかご紹介します。手や物を近づけると水が出るハンズフリー水栓は、お湯の無駄遣いを防ぎ、給湯エネルギーの削減につながります。住宅の中で最も熱の出入りが多い窓では、室外側に強度・耐久性の高いアルミ、室内側に断熱性に優れた樹脂を採用したハイブリッド窓によって、フレームをスリム化しながら断熱性能を高めることができます。また、外付け日よけ(スタイルシェード)は、太陽からの熱を部屋の外側で効率的にカットし、暖冷房に由来するCO2の削減に貢献します。

住まいのCO2削減に貢献する製品 世帯当たりの用途別エネルギー消費の内訳 「給湯29% 」「厨房10%」 「暖冷房28%」「動力・照明 33%」 ナビッシュ(キッチン用タッチレス水栓) サーモスX(高性能ハイブリッド窓)

出典:資源エネルギー庁「平成30年度エネルギーに関する年次報告(エネルギー白書2019)」
画像はイメージです

「世界中の誰もが願う豊かで快適な暮らしの実現」を目指すLIXILにとって、様々な製品を通じて快適性と環境負荷低減を追求することは当然のことだと考えています。

―― 気候変動に対する取り組みについて、どのようなことを実践していますか。

サプライチェーン排出量のスコープ1においては、工場で燃焼させている天然ガスの排熱の活用など中長期的な省エネを推進する議論を始めています。
スコープ2では、当社の事業活動で使うエネルギーの約半分に相当する電力を、再生可能エネルギーや低炭素電力に切り替えています。
スコープ3につながる取り組みとして、地球環境への負荷が低い部品・原材料を調達するための方針、基準を示した「グリーン調達ガイドライン」を制定し、取引先様に当社の環境活動およびガイドラインに沿った調達活動へのご協力をお願いしています。
また、大和ハウス工業のサプライヤー会員で構成されるトリリオン会に参加し、当社の取り組みを紹介したり、情報共有でネットワークを強化するなど、他社との連携を深めています。

2019年11月に発表した「LIXIL環境ビジョン2050」達成に向け、当社の事業活動と提供する製品やサービスにおける環境負荷の最小化を目指し、私たちにできることを着実に実行していきます。

森林保護は地球からの要求課題。生物多様性についてWWFジャパンと考える

公益財団法人世界自然保護基金ジャパン(WWFジャパン)は、人類が自然と調和して生きられる未来を目指し約100カ国で活動している環境保全団体です。大和ハウス工業が2010年に策定した「生物多様性宣言〜人と自然が『共創共生』する社会へ〜」で、分譲地の開発や木材調達における生物多様性ガイドラインの制定に協力し、運用状況の検証を行ってきました。

お話を伺った方

相馬真紀子 さん

公益財団法人世界自然保護基金ジャパン(WWFジャパン)
森林・野生生物室 森林グループ長

―― 生物多様性ガイドラインにおいて、大和ハウス工業とどのようなコラボレーションをされているのでしょうか。

大和ハウス工業さんが策定した生物多様性ガイドラインの木材調達方針と、2019年に新たに策定された森林破壊ゼロに向けた方針に、環境NGOとしての観点や専門的知見を提供しています。社内で運用される木材調達方針が、対外的に結果を出すことを目指す森林破壊ゼロにどうつながるのか、道筋をつけるお手伝いをしています。

―― 森林保護の重要性について教えていただけますか。

森林の機能は多岐にわたります。木材などの資源、景観、水源、土壌保全、レクリエーション、気候変動抑制として重要なCO2の吸収、野生生物の生息地など。また森の中に住む先住民族の方々にとっては大切な暮らしの場所です。しかし、1990年からの30年間で、世界の森林は約178万km2、日本の国土のおよそ4.6倍が消失しています(FAO2020)。サプライチェーンにおける森林破壊をゼロすることは、SDGsの目標15「陸の豊かさも守ろう」というゴールにも直結する世界全体における重要な要求課題です。

―― 森林破壊ゼロという課題に対して、世界的にどのような動きが進んでいますか。

森林破壊ゼロに対する取り組みはこの10年で大きく変化しています。
2010年、生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)が愛知県名古屋市で開催され、生物多様性の損失を止めるための20の個別目標「愛知目標」が設定されました。
同じ年には、食品・消費財大手や小売大手約400社が加盟する国際的な業界団体「ザ・コンシューマー・グッズ・フォーラム」が2020年までにサプライチェーン上の森林破壊をネットゼロにすることを宣言しました。
2014年の国連気候サミットでは、「森林に関するニューヨーク宣言」が採択され、2030年までに森林を保護・回復し、天然林の減少を終わらせるという世界的な目標が掲げられました。

このような世界的な動きと平行して2015年にSDGsが設定されたことで、人々の意識や社会の潮流に変化が起きていることを感じています。ESG投資を重要視する風潮も後押しとなり、民間企業の動きが活発化してきました。森林破壊や生物多様性の課題は、トップランナー企業だけの取り組みでは解決できません。関連企業全体で取り組む動きが増えていくことを期待しています。

SDGsの最後に置かれた目標17「パートナーシップで目標を達成しよう」は、目標1〜16のどれもが、一人だけ、一社だけでは実現が難しいことを示しています。扇の要となってサプライチェーンを巻き込み、環境NGOとも協働して旗振り役になることが、これからの大企業が果たすべき責任だと、大和ハウス工業は考えます。

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