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SMART ECO-TOWNS サステナブルな街 サンホセ州、他(コスタリカ)

コスタリカを代表するルネサンス様式の国立劇場は、首都サンホセの中心地に位置する象徴的な存在。

写真提供:辻丸純一

街

サステナブルな街 特集

地球幸福度指数1位コスタリカ、国を挙げた環境政策でサステナブルシティを目指す
〜【後編】電力のほぼ全てを再生可能エネルギーで供給 将来はカーボン・ニュートラルを目指す〜

前編:コスタリカに暮らす丹羽順子さんに聞く

サンホセ州、他(コスタリカ)

2017.08.10

コスタリカ

英国のシンクタンク「ニュー・エコノミクス財団」が3、4年ごとに調査・発表している「地球幸福度指数」(※1)において、コスタリカは2009年版、2012年版、2016年版と3回連続、堂々の第1位。

なぜ、コスタリカは世界でもっとも幸福度の高い国といわれるようになったのでしょうか。

※1 国民の生活の満足度と平均寿命、環境負荷などをもとに国の幸福度を算出したもの。

自然を大切にするコスタリカでは、電力も98%以上を再生可能資源から得ています(※2)。大規模な河川と雨に恵まれたコスタリカでは、電力の74%は水力発電でまかなっていますが、近年では地熱発電や風力発電の利用も拡大しています。将来的には排出される二酸化炭素をその吸収量と相殺する「カーボン・ニュートラル」を目指しています。

※2 2016年の実績は98.2% 

1年を通して湿潤なモンテベルデ自然保護区の森。豊かな水資源を利用した水力発電によって、この国の再生可能エネルギーの大部分が生み出されている。

写真提供:辻丸純一

満々と水をたたえたトルトゥゲーロ国立公園の運河。この地域の年間降雨量は6000ミリにもなる。

写真提供:辻丸純一

安定的に電力が供給できる再生可能エネルギーの活用を目指して

コスタリカ国民の約20%が暮らす首都のサンホセは、2014年から米州開発銀行が中南米の新興都市を対象に進めている「新興・持続的都市開発イニシアティブ」(ESCI)の対象都市となっており、日本の内閣府が進める「環境未来都市」構想の知見を活用した都市開発を進めています。

具体的には、ESCIの下で、エネルギー、土地活用、市民安全、廃棄物管理、運輸交通、水・衛生といった都市開発に関わるプロジェクトを実施しています。

順調な経済成長を背景に土地活用、運輸交通をはじめとした都市開発での電力需要が増加していることなどから、エネルギーに関しては特に力を入れており、再生可能エネルギーを中心とした電源開発を進めています。

コスタリカ政府は、天候に左右されることなく安定的に電力が供給できる地熱発電に関心が高く、2013年11月に始まったコスタリカ北西部グアナカステ県の地熱発電所建設プロジェクトには、日本の独立行政法人 国際協力機構(JICA)も協力しています。現在、「ラス・パイラスⅡ」(55メガワット)、「ボリンケンⅠ」(55メガワット)、「ボリンケンⅡ」(55メガワット)の3つの地熱発電所の建設が進んでおり、「ラス・パイラスⅡ」については、2018年11月の試運転、2019年1月の商業運転開始を目標としています。

コスタリカの総発電量に占める地熱発電の割合は着実に増えており、2015年には15%程度でしたが、2018年に約20%、さらにそれ以降も増えると予想されています。

これらの地熱発電所が完成し安定的に電力を供給できるようになれば、コスタリカの再生可能エネルギー100%達成の目標はさらに近づき、世界初の「カーボン・ニュートラル」の実現にも一歩前進できることでしょう。

コスタリカの「グアナカステ地熱開発セクターローン-ラス・パイラスII」で噴気試験の様子

写真提供:JICA

時計台のあるセントラル・アベニューは、首都サンホセのダウンタウン目抜き通り。

写真提供:辻丸純一

首都サンホセは、日本が推進する「環境未来都市」構想の知見を活用した都市開発を進めている。

「プーラ・ヴィダ」のあいさつに象徴される穏やかで平和を愛するコスタリカの国民性

こうした国を挙げての環境政策が、なぜ実行できたのか。そこには、物事を柔軟に受け入れる、平和で穏やかなコスタリカの国民性と高い教育水準があるのではないか、と環境・平和活動家の丹羽順子さんは話します。

1948年、コスタリカは軍隊を廃止。1983年には「積極的永世非武装中立宣言」を発表しました。安易に軍事に頼らず、平和的解決を積み上げていくことに注力し、「平和主義外交国家コスタリカ」のイメージを世界にアピールし続けています。さらに、平和教育や環境教育を行い、国民の意識の向上にも努めてきました。その結果、世界に先駆けてサステナブルな社会がつくられていったのでしょう。

「もちろん、コスタリカでも他者と対立することはあります。しかし、それを何もせずに回避したり、暴力や喧嘩で解決するのではなく、話し合いで解決していこうという意識が強いような気がします。コスタリカの人々は、国民一人ひとりの平和が地域や国家、ひいては世界の平和につながっていくと考えているように思いますし、平和国家であることに誇りを持っているように感じます」(丹羽さん)

この国の雰囲気を端的に表しているのが、他のスペイン語圏にはないコスタリカ独自の「プーラ・ヴィダ」という言葉です、と丹羽さんは教えてくれました。

「直訳すると、『ピュアな人生』ですが、人によって込める意味はさまざま。『元気?』も『またね』も、『プーラ・ヴィダ』で表します。『どんなときでも、どんな状況でも、今を幸せに生きていこう』という、生きるうえでのポジティブなメッセージをこの言葉で発信しているんです」という丹羽さんも、プーラ・ヴィダは大好きな言葉なのだとか。

生物多様性と再生可能資源に恵まれ、自然と人間とが調和した暮らしを営んでいるコスタリカの人々。次の時代をよりサステナブルなものにしようと行動する国民一人ひとりの意識が「幸福度の高い国」をつくり上げてきたといえそうです。コスタリカのサステナブルシティへの挑戦は続いていきます。

出典:外務省「豊かな自然と平和を愛する国 コスタリカ」
コスタリカ国家エネルギーコントロールセンター年次レポート2016(2017年3月22日発行)より

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