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TOPICS 建築家・藤森照信さんと考える。「サステナブルな建築ってなんだろう」 後編

写真提供:藤森照信さん

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建築家・藤森照信さんと考える。「サステナブルな建築ってなんだろう」【後編】
~藤森照信作品に見る、建築のサステナビリティ~

前編:日本の建築とサステナビリティの関係

2017.08.31

藤森照信 さん

建築家、建築史家

近代建築史・都市史研究を経て1991年、45歳のときに〈神長官守矢史料館〉で建築家としてデビュー。土地固有の自然素材を多用し、自然と人工物が一体となった姿の建物を多く手掛けている。建築の工事には、素人で構成される「縄文建築団」が参加することも。代表作に〈タンポポハウス〉〈ニラハウス〉〈高過庵〉など。近作に〈多治見市モザイクタイルミュージアム〉や「ラ コリーナ近江八幡」の〈草屋根〉〈銅屋根〉などがある。東京大学名誉教授、工学院大学特任教授。東京都江戸東京博物館館長。

「シンボルとしての建築物」が果たす役割

―― さて、現在、サステナブルという言葉は地球環境、人間社会の文明、経済システムの持続可能性という幅広い意味合いを含んで使われるようになりました。広く捉えると、サステナブルな建築の役割はどのようなところにあるでしょうか。

藤森 : 法隆寺のように千年以上もそこにあることを踏まえれば、建物は山や川の次に耐久性のあるもの。そして、地域にとって、そんなシンボリックな建物があるということは大事だと思います。それが、地域のアイデンティティになるんです。

京都や奈良には人々が思い浮かべる神社仏閣が数多くありますが、東京はそうした建物が少ないかもしれません。もし、江戸城の天守閣が現存していれば、現代の東京駅と対峙して、理想的だったのですが。

日本芸術大賞や日本建築学会賞作品賞を受賞するなど、建築家としても評価が高い藤森照信さん。

―― シンボルになるには、どのような条件が必要でしょうか。

藤森 :地名を見聞きして、すぐにイメージが浮かぶ建物です。町や村の顔にあたる建築ですね。そのとき大きさはあまり関係なくて、その土地ごとのスケールに合わせてあればいい。そして、あまり個性的でなくてもいいんですよ。人の顔だって、そんなに変わらないものですから、微妙に違う建築でかまわないと思います。

神社仏閣もいいですが、お城があるとさらにいいですよね。松本城、姫路城、彦根城、犬山城など、土地ごとの城郭は地方の魅力を高め、たとえ規模が小さくても地元の誇りになっています。シンボルとしての建築物は大切にされますし、そうした建築があり続けることで、地域ごとに望ましい景観のあり方や文化・伝統の継承などの意識を高める役割を果たすのではないでしょうか。

「自然と建築の融和」が大切な理由

―― 建築家としての藤森さんにお聞きします。「自然と建築」というキーワードは、藤森さんの中で重要な位置付けにありますよね。

藤森 : 建築は、人工物の中では最大のものです。その建築を、森羅万象で最も普遍的である自然と融和させたい。その一心で建物をつくってきました。ただし実際につくるにあたって、木や石、土や草といった自然素材だけで仕上げるのは、耐震や法律上の問題で無理があるんです。私の大好きな自然素材だけで、全体をつくることはできないのですね。

ですので、鉄や鉄筋コンクリートで構造体をつくり、それに自然の素材を意匠として仕上げる。「科学技術を自然で包む」とよく表現しているのですが、こうすることで建築と自然を融和させようとしています。

―― 実際に藤森さんが設計された建物で、自然と建築の融和が分かりやすく表現された作品はどれですか。

藤森 : 一番分かりやすいのは、〈草屋根〉でしょう。屋根一面に草を生やす建物は、ずっとやってみたいと思っていましたが、なかなか建て主が現れませんでした。それまで実験は散々していて、緑が枯れてしまう失敗も多かったのですが。草木のメンテナンスを含めて注意深く考え、〈草屋根〉は実現することができました。

飲食店やマルシェなどが入る複合施設「ラ コリーナ近江八幡」の草屋根は、藤森さんが設計。その名の通り、屋根一面が草に覆われており、緑豊かな周囲の環境と地続きに連なる。2015年の作品。

写真提供:藤森照信さん

―― 〈草屋根〉は周りの風景も含めて、まさに自然と一体になっている建築だと感じます。

藤森 :ただ、木や草を使う難しさというのがあって、ひとつ間違えるとみすぼらしく見えるんですよね。石と木を並べたら、石のほうが高級に見える。今度は石と金銀を並べると、たとえ大理石であっても金や銀のほうが高級感がある。装身具は金や銀でつくることが多いですよね。その特性を認めたうえで、みすぼらしさを感じさせないようにする。それは私の美学で、いつも細かい収まりまで徹底して考えています。

―― 〈高過庵〉やご自邸の〈タンポポハウス〉については、いかがですか?

藤森 :〈高過庵〉は、子どもの頃から木が好きで、木の上につくった茶室ですね。ツリーハウスは昔からつくられていますが、視覚的にあまり美しいものではありません。実際に訪れると、鳥の巣のように、どこにあるのか分からないものが多いのです。そうではないツリーハウスをつくりたいとずっと思っていました。

〈タンポポハウス〉は、〈神長官守矢史料館〉に続く2作目です。当時は屋根に草を生やす事例はほとんどありませんでしたので、反応はとても明快で、私の親や親戚たちからは「なんでこんなに貧乏くさいものをつくるんだ」と言われました(笑)。その当時はみんな、鉄やガラスを使ったモダンなものがいいと思っていたわけです。建築界では「何をやろうとしているのか」と訝しげに尋ねられました。

ただその時に嬉しかったのは、伊東豊雄さんとか石山修武さんとか安藤忠雄さんとか、僕と同世代の建築家が、「何をやろうとしているのかよく分からないけれど、何か面白いからもっとやったほうがいい」と評価してくれたことです。その言葉があったから、今まで続けてこられたようなものですね。

45歳で設計活動を始めて、今年70歳になるので、25年が経ちました。やはり、つくるということが一番面白いので、これからも続けていきたいと思います。

藤森さんの自邸でもある「タンポポハウス」。1991年の作品。力強い鉄平石と、その合間に生える緑の調和が強い印象を残す。

写真提供:藤森照信さん

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